このレビューは、第4回クソゲー竜王戦に出展されたものです。発表したものとは何も違いがありません。表現のダサい所とかもそのままです。
だからここで発表する必要もないかもしれませんが、このレビューにかなり気合を入れたのは事実であって、他にもいろいろあってこっちでも公開します。(ついでに、書ききれなかった部分を別ページにまとめました。もし興味があるならどうぞ)
ちなみに、あまり高い評価は得られなかったようです。わりと問題が多いレビューなので当然かもしれません(自信がないわけじゃなかったけど)。が、正直言ってもっと意見がほしかったなあ。否定的なのでもいい、というかそっちのほうが嬉しいぐらいですが、感想を送ってほしいです。
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2010年追記。元の文章を載せてから何年も経ってしまいました。
「胎魔の鼓動」で検索すると最初にヒットする酷評ページとはこのページのことです。
……トップに出るのはクソゲー竜王戦のほうだけどな!
ここにいくら追記しても誰も見ねーですよ。
クソゲー竜王戦に参加したサイト群は多くがリンク切れになってますが、このページはまだ生きとります。
それどころか、この文章は諸事情があってWEB上に3つも残存してます。そのうちの一つが今あなたが見ているこのページです。多すぎだ。
内容はこの追記部分を除いて全て完璧に同じですので、わざわざ探して見比べたりしないでください。
えー今更ですが、この文章は意図的に長く、だらだらとした書き方をしています。当時そういう思いを込めて書いたからです。
だからかなり重箱の隅的なことまで突っ込んで書いており、たいていのプレイヤーは気にしないんじゃないか、という内容も含んでいるかもしれないわけです。
だから、内容が間違ってると言いたいわけではありませんが、あくまで一プレイヤーの中で決定した評価基準なり比重なりに応じた書き方をしたものであることに注意してください。
決して「ウィザードリィ外伝IV」という作品に対する全ユーザーの代表意見ではありません。
いや終盤のゲームバランスについての記述は、読み返すとちょっと怪しいところもあるのですが。
なぜ今頃こういうことを書くか?というと、最近はクソゲーまとめウィキとかいうページが存在するのですが、
なぜかこのゲームも挙げられ、この文章を参考にした、かもしれない、記述も見られたため、ちょっと思い出してしまったからです。
いや全部がそうというわけじゃないのですが(初期値違うし、女性優遇の装備があったりするのはドラクエ3からの伝統じゃんか)。
序盤のヌルさやストーリーの問題について指摘はだいたい自分と同じなのですが、本当にそれが多数派の意見なのかなあ?と思ったりします。
何よりこのWIKIが(おもに他ゲーについて)私怨で満ちていたり動画を参考にしてたりエミュでプレイしたんじゃねえかという感想があったりして信用ならんと思ったので、ここにその意思を表明したかったわけです。
クソゲーを楽しもうという意気込みが感じられないンですよね。まあこの文章もそうなんだけど。
(実のところ、この文章はわざと楽しくない書き方もしています。クソゲー竜王戦の中では浮くように意図したものであって、こういう文章がクソゲー界で主流になってはいけないと思う)
2011年追記。
2010年から少し状況が変わったようで、今は「胎魔の鼓動」で検索すると最初にヒットするページがここになってました(゚-゚)
どうやらこの1年の間に第4回クソゲー竜王戦が消えたようです…
というか、どこぞのWIKIからもうちを示唆する記述が消えたというか、記事ごとどこかに行ったようなので、2010年の追記も一部意味が通じなくなりました。やれやれだ。
長い前置きはここまでにしまして、以下が本文となりますヽ(´ー`)ノ
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この世には知らねばならぬことがある。
「ウィザードリィ(WIZ)」はコンピューターRPG黎明期の作品であるにもかかわらず、いまだに高い人気を誇っている。
このゲームについていまさら魅力を語る必要もないと思うんだけど…キャラクターの成長、一瞬のミスが命取りとなる戦闘、そして独特のファンタジー世界など、数え上げればキリがない。
WIZシリーズは多くの機種に移植されているが、日本ではファミコン版が最高峰とされている。
独自のアレンジも加えたファミコン版のヒットを受けて、ゲームボーイ専用ソフト「ウィザードリィ外伝」という新シリーズも展開、このシリーズもさらなるゲーム性の発展やオリジナルのシナリオで高い評価を得ている。
そんな「WIZ外伝シリーズ」がSFCに登場したのは1996年。それこそが今回取り上げる「ウィザードリィ外伝4 胎魔の鼓動」である。初代アップル版WIZがアメリカで登場してから15年。親元を離れて随分経つという感じだ。
そんな外伝4の売り文句は「シリーズ初の東洋風世界」。WIZならではの、「ニンジャサムライ」たちがメインのようだが……
***
タイトルBGMからして、和楽器を多用しながらもWIZ的な旋律、という妙なものに仕上がっている。水墨画風のストーリーデモまである。
ゲームの舞台は元禄期の江戸を思わせる城下町、「緋蓮城」。まさに東洋風。ジャポネスクな世界観だ。
まず手始めに、他のWIZシリーズ同様に「訓練場」でキャラクター作成。
キャラクターにはWIZ6以降追加された種族や職業も選べるので、キャラクター選択の幅は無数にある。(これがあってこそのWIZです)
人間、エルフ、ドワーフといったファンタジーRPGおなじみの種族や、犬人間のラウルフや猫人間のフェルパー、毛むくじゃらのムークといった独自種族まで。和風に言うなら妖怪変化のたぐいが選べる。
職業は戦士、盗賊、魔術師、侍、忍者、さらには錬金術師や超能力者まで。
「戦士と侍の違いは何なのか」なんて言うようではこのゲームはプレイできまい。「侍は魔法戦士」だってことはWIZなら常識だ。
それから侍は刀などの日本の武器を、戦士はロングソードなどの西洋の武器を使用するという大きな違いがある。すなわち、「戦士」は和風ではない。
新規パーティは「大黒商店」という店で装備を整える事になる。ここでは「ちょうちん」や「わらじ」に混じって「ウォーハンマー」だの「メイス」だのが売られている。…というかむしろ西洋の武器屋に刀などをいっしょに並べたような雰囲気である。
他のWIZシリーズ同様にプレイヤーが売ったアイテムが店に並ぶし、アイテムの呪いを解くサービスもある。はっきり言ってヘンだ。
あと「冒険者の宿」という旅館のような施設がある。松竹梅の3つの部屋のほか、「簡易寝台」と「馬小屋」が用意してある。そして他のWIZシリーズ同様に、普通は馬小屋しか利用しない。しかも見た目は高級そう。???
忘れてはならないのが仏教風の寺院、「神鳥寺院」。ここでは他のWIZシリーズ同様、麻痺や石化の治療、さらに死者の復活の儀式を行える。もちろん有料。金がないと「この背教者め!」と罵声を浴びせられるのも他シリーズといっしょ。
と、「他のWIZシリーズ同様」を嫌という程多用してみた。
このゲーム、一見和風でありながら、その精神は完璧に西洋的WIZ世界である。しかもこれはスタート直後。まだ本編は始まってさえいない。
まあこの程度なら違和感の部分を笑って済ませればいい話なんだろうけど…
***
ストーリーは「先代の国王が死んで乱れた国を治めるべく、新しい国王のために古代より伝わる三種の神器をとってくる」というもの。
神器はそれぞれ国の領内にある3つの塔にある。
冒険者たちには3つの迷宮が待ち受けているのだ。どの塔から攻略してもよいことになっている。
*以後ネタバレ配慮なし*
それぞれの塔について解説しよう。
戦国の城とか、忍者屋敷のような趣の塔。攻略手順としてはここから入るのが良い。
この塔はひとつの独立国家になっており、塔の殿様を暗殺した悪党が神器を守っている。その悪党も部下に暗殺されるなど、城の王様のことをほっといていろんなことが発生する。前の殿様の臣下たちの強力を得て神器を手に入れるのが普通の進行だが、もし前の殿様が暗殺されてなかったら、その(善良そうな)殿様から神器を奪い取るってことになったんじゃないか、と余計な事を考えさせる。たしかに神器にこだわってる住人はあまりいないようだが…
さて、入り口から板張りの廊下と障子張りの扉、そして畳の部屋など、グラフィック面はかなりきれい。しかし障子の扉を「ドカッ」という音で開けるのはちょっと驚く。
ここは侍や忍者が多く登場する。「あしがる」「げにん」といったノーマルな忍者と侍から、「チャンプサムライ」「ハイマスター」などのWIZシリーズおなじみのニンジャサムライまで。
もちろんそれだけではなく、「さんぞく」「おくじょちゅう」「ぶぎょう」など、和風なら何でもいいのかよ、とツッコミたくなる連中や、「ソードマン」「マジシャン」などそもそも和風じゃないやつまで。畳部屋で馬に乗ってくるのまでいる。
まあ整合性のないデタラメな世界観はWIZシリーズなら別に珍しいことでもないのですけどね…
***
二つ目に行くべき塔は幻術の塔。ここは他と違い西洋風で、大理石でつくられた迷宮だ。
地下と地上の住人が対立している構造で、地上部分は妖精が住まい、地下には妖怪たちが住んでいる。
ここでは地上の住人が神器を管理しており、不思議な仕掛けで取れなくしてしまったので、地下の住人に神器を取ってこいと頼まれる。もちろん冒険者は地下の住人に神器を渡さないで持ち逃げ。(そもそも渡す手段がない)
外見は西洋風だがモンスターは結構和風だ。ここは精霊や妖怪のたぐいが多いのだが、「やまわらし」「カラステング」といったシンプルなものが出現。
ただし、西洋風のフェアリーだの魔術師だのもたくさん出てくる。
このあたりになると、東洋風というのは嘘で、西洋風と和風を適当にぶちこんだ正体不明のジャンルだということに気付く。
かと思えば、塔の一番地下では、「しったるどうじ」だの「いばらきどうじ」だの、聞いた事も無いような超和風モンスターが大量に出現する。
「いぶきどうじ」は麻痺のブレス、「いばらきどうじ」は冷気のブレス、「しったるどうじ」は炎のブレス…と、適当に属性を割り振ったような感じで、いい加減な扱いである。
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最後に残ったのは、薄汚れた寺院のような死霊の塔。
冒険者は住人、というか幽霊たちの協力を得て地下へと進み、元凶であるらしい不死の研究をしている悪党から神器を強奪する。
ここでは名前の通り、幽霊やゾンビやゴーストがたくさん出てくる。もちろん西洋風のやつも。だがここは他の塔に慣れた身にはほとんど気になることはない。雪女も雪男もゾンビも鎧騎士もドルイド僧もさっさと皆殺しだ。成仏しやがれ。
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マニュアルのQ&Aコーナーにはこうある。
「Q.冒険を始めようとしたら行く場所がたくさんあって困ってます。どこから始めればよいのですか?」
「A.シナリオは3本の塔いずれからでも始めることができますが、一つの塔をクリアーすると他の2つの塔のほとんどのイベントが発生しなくなります。(クリアーはできます)シナリオを楽しみたい方はバランス良く塔を攻略することをお勧めいたします。」
待て。質問に答えてない、などと突っ込むのはやめておくとして、「ほとんどのイベントが発生しなくなります」ってなんじゃ?!
…とりあえず、どこからでも攻略できるが、重要アイテムが他の塔にあったりするので、攻略手順はある程度決まってくる。
「不動→幻術→死霊」の順番なら行き詰まりはない。三つの塔の敵が弱いので、「神器の目前まで到達してから、神器を放っておいて他の塔を攻略する」ということになりがちだ。
もっとも、イベントにこだわらずにNPCに襲いかかってアイテムを強奪したり、鍵のかかった鉄格子をムリヤリこじ開けたりといった方法もある。なお、これを行うと問答無用で消滅するイベントもある。2回プレイしないと判らないだろうが。(鉄格子が基本的にアイテムやスイッチでしか開ける「べきである」ことに気付いたのは2回目のプレイだった)
そしてそれぞれの塔は、奥にある神器を取るとクリアとなるが、「イベントが発生しなくなる」とはどういうことか?
不動の塔の神器、「はかいのけん」を取ると、その瞬間塔の中にいたNPCがいなくなる。助けた人々も、敵対してた連中も、全員。あたかもクリア後のメッセージを作るのが面倒だったかのように。
持ち帰ると次のメッセージ。
CONGRATULATIONS!
君たちは破壊の剣を持ちかえった
その報酬として
10000GPを受け取った
しかし、神器をうばわれ、
心の支えを失った塔の住人たちが、
新たな神器を手に入れるべく、
他の塔に攻め入ったというウワサが
町中に広まっていた。
え?神器を取ったらそんな大騒ぎに?
町でうわさを聞いてみる。それまでは商店の説明とか宿屋の説明とか、自分の店の説明しかしなかった人々が、突然「戦が起こる」とかなんとか言い出した。
そして他の塔に行ってみる。
幻術の塔では「きっとここで大規模な戦いが行われたのだろう」、死霊の塔は「きっとこの塔に住む者と侵略者とが激しく争ったのだろう」と、かなり大変な事になっている。他の塔の神器なんか取りに行ってどうするんだ?
この騒ぎでほとんどのNPCはいなくなっている。しかし、やっぱり神器は残っている。幻術の塔の神器「せいれいのマント」を取ると、わずかに残った(善良な)NPCもいなくなる。
かなり嫌な気分になりつつも、持ち帰ると、
CONGRATULATIONS!
君たちは精霊のマントを持ちかえった
その報酬として
10000GPを受け取った
しかし、神器をうばわれ、
心の支えを失った塔の住人たちが、
新たな神器を手に入れるべく、
他の塔に攻め入ったというウワサが
町中に広まっていた。
おい。なんで同じ事が起こる。
ついでに、神器がなくなってるはずの不動の塔も荒らされてる。残る神器は一つだが…
死霊の塔でも(中略)かくしてNPCはほとんど全滅(二人だけ生き残るが、セリフさえ変化しない)。イベントは完全になくなった。数多くの犠牲を払い、三つの神器はそろった。
CONGRATULATIONS!
君たちは三種の神器を持ちかえった
その報酬として
10000GPと30000EXPさらに称号を得た
三つの神器を得た王は、その力をもって反乱の鎮圧に乗り出す。
かくして武力によってこの国は平和になったとさ。
***
所詮この世は弱肉強食、「力こそパワー!」である。冒険者の性格も「悪」でいいのだ。力でねじ伏せて何が悪い?!
でも(結果的に)塔の住人を神器を取るために利用して、あげくに見殺しにしたのだから、少しぐらいフォローしてくれよ、と言いたくもなる。「善」のパーティだったらどうするんだ?
そんな暗黒道一直線の冒険者達に新たな指令が。勝利の宴会でみんな酔いつぶれてた緋蓮城から王がさらわれたのだ。しかも犯人は側近の賢者のひとりだった…(ドラクエ5でまったく同じエピソードがあったような)
連れて行った王にズバッと斬りつけ、その血で古の魔王の洞窟の封印を解く賢者その1(本名不明)。
王が生きてるのかどうかも疑わしいが、とにかく王を助けに向かう冒険者。あらたな迷宮、「古の洞窟」へと乗り込む。
報酬のためか、さらなる名誉のためか、それとも三つの塔を滅ぼした償いのためか…
たぶん、多くのプレイヤーにとっての理由は、「迷宮があるし、せっかくだから」だろう。賢者も王様も今はじめて出てきたに等しいからだ。ともあれ、ここまでの塔ではボリューム不足(プレイ時間やキャラクターレベルに関して)だったので、新しい迷宮があって当然ではある。
***
古の洞窟は、迷宮の構造に特長がある。
ここの1階から4階までが「ウィザードリィ1」の地下迷宮と同じ構造なのだ。
それだけ。はっきり言って何のために再現したのか理由がよく判らない。微妙に違ってるのもよくない(FF9でカオスが出てきたときに懐かしさよりも違和感を感じたのに近い)。
WIZ1をプレイした人ならイベントの位置がわかるので簡単に突破できるが、そのぶんつまらない。何しろここにはほとんど何も無い。さらに、敵は3つの塔と同じ面々で、浅いフロアから出てきたザコ(レベル1程度)まで登場して、いいかげんイヤになる。
そして、5階からはまったく違う構造になる。
5〜7階は3つで一つのフロア。ここには大きなパズルがある。3フロアに渡って展開する巨大ルービックキューブだ。
3×3×3のブロックに散らばる9つの魔神像を下のフロアに集めればいいのだが、簡単なのでわずか数回の操作でこのパズルは終了する。
しかもこのブロックがフロアの大半を占めており、そのせいで単純な構造となってしまっている。
世界観もむちゃくちゃだ。完全に和風は捨て去られている。
この石造りの地下迷宮に登場する敵は「アークウィザード」「オークロード」といった、どうみても日本にはいない連中ばっかり。
ここに登場する和風の敵は数えるほどしかいない。それも「ジョーニン」(上忍ね)「ショーグン」といった西洋風ニンジャサムライばかりなので、厳密には和風の敵とは言えない。
パズルを解いて7階のさらに奥、「胎魔界」という、和風とはかけ離れた空間にたどり着く。次々と現れる敵を倒して先に進むと、醜い芋虫のような怪物を発見。
その脇には賢者その1(本名不明)がいた。
「フフフ、おそかったようだな。
見よ!
今、新たな魔王が誕生する!
この瞬間をどれほど夢見たことか。
かつての魔王は天から降り立った
たったひとりの男によって破れさったが
今回はその神の男の血を引く
王子を素材にしたのだ。
失敗するはずが無い!
きさまらには、新しき魔王の
最初のエサにでもなってもらおうか。
ん!どうした胎魔王!この血では!?
ただの人の血と変わらぬはずが無い!
あの、あの男の血を引く・・・
ギャーッ!!!・マ・・ロ・−ル」
賢者は胎魔王の口から吐き出された
粘液で一瞬にして消え去った。
「今回は」「失敗するはずが無い!」なんのこっちゃ?セリフだけで状況描写もなし。画面も賢者その1が突っ立ってるまま動かない。「ん!どうした」のあたりで何が起こってるのかもプレイヤーには意味不明。
よくわからないうちに賢者その1は消滅。ボスキャラである醜い芋虫、「たいまのまおう」と戦闘になる。
「魔王」とやらをあっさりと倒すと、光輝く球体につつまれた王様が出てくる。そして「2人の賢者にこれを渡せ」と、「いんろう」をもらう。
あとはこれを持ち帰ると、賢者その2とその3(見た目はその1とかわらないハゲオヤジ)が出迎えてくれる。
賢者の力で王を救出。かくして、今度こそ国に平和は戻った。時代劇風のスタッフロールが流れる。監督、脚本とかだけでなく、音響技師や壁装飾、大道具までいる。なぜいまごろ(間違った)和風世界になる。
このゲーム、東洋風世界をうたいながら、根底の世界観が完全にWIZに染まりきっている。とくにイベントシーンはそれが顕著。
メッセージが「きみたちは〜」を中心とした、ナレーターが語るような言い回しであったり、「上にまいりま〜す」「正解!おめでとう!世界の果てにご招待!」とか脱力メッセージがいきなり出てきたり(原作では脱力はしないけど)、和服のNPCが英語の直訳くさい日本語で話したりといった感じだ。
まあ、これはWIZファンなら笑って済ませられる話。しかし、一方でWIZらしくないところがかなりある。
まず、ナレーターが勝手にシナリオを進行する。ちょっと調べただけでスイッチを勝手に押したり、人を殺しても何とも思わないくせに芋虫に同情したり(偽善者め)といった事態が元のWIZシリーズと比べて多いように感じてしまう。
まあこれも許そう。強制イベントのRPGなどいまさら珍しくもない。
次にクリアしたイベントが消滅する事。WIZのイベントは同じ場所で何度も発生するのが基本なのだ。これが無いせいで、キャラクター20人も登録できるのに、第2パーティをつくる楽しみが減ってしまっている。
って、イベントが復活しないのは他のRPGなら当然なのだが、それならイベントでアイテムを取って、すぐ捨てるとやっぱりイベントが復活するのはなぜなのか(たとえば、魔王を倒した直後にもらった印籠を捨てると賢者その1と魔王が復活する)。どっちかはっきりしろい。
…まあこれも許すことにしよう。
それよりもWIZかどうか以前にもっと致命的なのがある。それはRPGにとって最も大切なもの…ゲームバランスだ。
WIZシリーズが理不尽に難しいゲームだと思ってる人がいたら、それは大きな間違いだと言いたい。確かにキャラクターが死にやすくて、死んだ時のリスクがほんの少し大きいけど、レベルを上げてじっくり進めば誰だってクリアできる(いや本当に)。
それでも油断するとレベル差があってもすぐ死んでしまう。死亡したキャラクターが復活に失敗して消失するということがあるので、可能な限り死なないように、たとえザコでも油断はできない。「殴ってりゃ勝てる」ような甘いゲームではない。それがWizardryなのだ。が。
本作の敵は弱い。弱すぎる。
まず3つの塔の敵の強さはどれも似たようなもので、一様に弱い。
最初こそ、こちらの使える魔法はごくわずかで戦士も頼りにならず、慎重に戦う必要がある。が、次のフロアに進む頃には強敵はいなくなる。なぜか敵が強くなるペースがこちらより遥かに遅いのだ。
しかも本作はWIZシリーズにしては敵の出現数が少ない(多くても4体ぐらい)。その上、魔法や特殊攻撃を使ってくる確率がどうしたわけか極端に低い。実際、ごくまれに低レベルの魔法をくらうと本気で驚くほど。恐怖の一撃必殺やレベルドレインを使う敵もほとんどいない。通常攻撃さえ大して当たらない。
レベル上げは最初の一瞬しか必要ない。敵が弱すぎるので魔法を使う必要もない。殴ってりゃ勝てる。「たたかう」を選択してれば倒せない敵はいない。
塔が三つもあるのも、ただ後の塔が簡単になるだけの結果となっている。思いきり単純労働で、だんだん面倒になってくる。
古の洞窟にたどり着くと状況も少しは変わるかと思ったが、1階から4階までの敵は3つの塔とまったく同じ。より簡単に。
さすがに5階からは敵も強くなるが、それもほんの少し。相変わらず恐ろしい特殊能力はほとんど使ってこない。
たまに強力なブレスや攻撃魔法で一瞬で理不尽に全滅したりすることはあるが、それは防御魔法を使えば防げるシロモノ。ただし、そこに着くまでに魔法を使わず「たたかう」だけで勝負をつけるクセがついてしまっていて、ついつい防御しそこなうのだが。
それでも、敵が複数のグループで出現したときは全体攻撃魔法で片付けようとするが、この洞窟に来る頃には魔法の威力も不足ぎみだし、敵の呪文防御も高まっていてあまり効き目が無い。無効化されない補助魔法だけ使ってればいいという感じだ。攻撃魔法を使うぐらいなら魔術師も「たたかう」を選んだほうがいい。
ついでにボスキャラも弱いので、わざわざ戦法を変える必要もない。ラスボスの「たいまのまおう」でさえも体力がちょっと高いだけで、攻撃力はむしろ低い。
このゲームバランスの簡単さはWIZシリーズ初心者むけにしたのかもしれないと思ったのだが、よく考えるとWIZ初心者がこんな「和風」をきどる奇妙なゲームに手を出すはずがない。(初心者向けとしても簡単すぎだと思う)
とにかく、WIZの常識に固執しまくってるのに、肝心なゲームバランスだけ全然違うというのはどういうことか。
もっともWIZプレイヤーなんて(私も含めてだが)キャラクターが死ぬと即リセットするようなヌルいプレイヤーばっかりだから、その手間を省く配慮かもしれない。もしくは逆にレベルを下げられたときもバカらしくてリセットできないようにする戦略なのだろうか。
…それも余計なお世話だ。
まだ問題がある。「三つの塔攻略手順」のところに「2回かプレイしないとわからない」と書いたが、実は必然的に何回もプレイさせられるようになっている。この世界には恐るべきバグがあるからだ。
バグの効果はシンプル。「ある条件」を満たしてゲームを再起動すると、データが初期化されたことを伝えるメッセージが表示され、今までの冒険がパーに…というもの。
この手のデータ消滅バグは普通にプレイしても起こらないものなのだが、このゲームは例外だ。
なにしろ条件が「ジルフェ(アイテムの呪いを解く魔法)を使う」だけ。なぜそんなことでデータが消える。
この魔法は覚えるのに特別な条件がいるわけでもない。パーティ構成によるが、3つの塔をクリアする頃にはだいたい覚えている。そして街での解呪は有料…必然的にジルフェは使われる。しかも、この呪文のせいでデータが飛ぶなど気付くはずもないので、このバグは何度でも再現する。
私はこの「謎のデータ消失事件」に対抗するため「ターボファイルツイン」まで買ってしまったのだが、このバグが発現したデータはターボファイルに記憶しようが再起動すると消失するため、いくら退避しようと無駄である。
それでも「電源を切る前(リセット前)ごとにターボファイルに保存、そして再スタートごとにデータが消えるのでターボファイルから読み込み」と言う方法でなんとかエンディングまではたどり着いたが、エンディング後に強制リセットが入ってしまうのである。私はそこから進む術を持たなかった…
かくしてユーザーサポートに電話してから言われるままにソフトを送りつける。それでデータ消失の原因がジルフェであったことを知るのである…
このデータ消失呪文のせいで何度もやり直す羽目になるので、タルい戦闘がさらに凶悪なものに進化している。
なお、全てのカートリッジで発生するわけではないらしいが、発生しないカートリッジがあったとしてもジルフェを使いたいとは思うまい。送り返されたロムでもターボファイル内のデータは助けられなかったし、そのロムでの再プレイでは当然ジルフェは使わなかった。
(そのロムも売っぱらってしまったので、今回はわざわざNP版で再プレイしてたりする。NP版でもこのバグが発生するらしいという話を聞いていたせいもある。NP版も安定しないらしく、確認した所バグは発生しなかった。
って、本作の書き換えは1月で終了したんで、もう関係ないけど)
***
…と、まとめに入ったが、まだ終わりではない。
賢者その1が最後にいった言葉、「・マ・・ロ・ール」だが、「マロール」というのはテレポート魔法だ。
そしてエンディングの最後、
Throb
of
the Demon’s Heart
−終−
と出てる背景の画像、どこかに倒れている賢者その1と傍らに見たことない金髪女性…こんなエンディングありかよ。