ガンダムSEEDは、当初よりテレビとは別に「外伝」の展開が決定されていた。
4つの雑誌によって展開されているこの物語は、「ジャンク屋」と「傭兵」という連合でもザフトでもない人間たちが主人公である。「ガンダムアストレイ」と呼ばれるテレビには登場しないガンダムを手に入れたことで、彼らの運命は動き出す。
シナリオはすべて千葉智宏氏。セガサターンの名作「機動戦士ガンダム外伝THE BLUE DESTINY」を手がけたそうである。
4つのシナリオはそれぞれが同一世界の、別の場面の物語であり、外伝どうしがお互いに世界観の補完を行う関係となっているが、単独でも十分楽しめる。
ただし、これらは本編と同じく「コズミック・イラ71年」が舞台であり、ときには本編と直接的に関係のあるエピソードも存在している。例として、本編でオーブ製のモビルスーツとして登場しているM1アストレイは、外伝の主役の量産型である。また本編の登場人物が意外な形で外伝に登場する場合もある。
が、しかし。
個人的には、どうも本編と外伝で連携がなっていない、という印象は拭えない。だいたい本編は単独で矛盾しているので、外伝と並べても矛盾するのは当たり前である。外伝だけで見ると矛盾は少ないので、いっそ本編を無かったことにしたい

……問題発言でした。

というか、ぶっちゃけて言うと外伝も別に面白いわけではないのかもしれない。ただ放送前に本編にそれなりに期待していて、その後の展開に失望していったタイプの人には結構相性がいいのではないだろうか。つまり、本編とは違うのである。

1:視点が違う

ジャンク屋と傭兵。ともにちょっと裏世界の住人。連合にもザフトにも与しない。彼らは主義主張よりも生きることが大切といった感じである。そしてそこにはナチュラルもコーディネイターもないのだ。そんな彼らの眼に、同じSEEDの世界はどう映るか。これが見どころである。

2:世界観が違う

だが、そもそもコーディネイターとナチュラルが共存できるということ自体が本編ではありえそうにない。信じがたいことに相手の絶滅を考えるような集団である。外伝のコーディネイターはそこまでアホではない。

3:全然違う

というか、まず描こうとしているものが完全に違うのではないか。それ以前に本編が何を描こうとしているのか想像だにできないが。
アストレイの世界は必ずしもリアルではない。ジャンク屋は強すぎるし、大仕事が適当に終わったりする。
だが、アストレイはそれが良いのだ。巨大ロボットの闊歩する戦場にリアリティなど必要か?
「必要なリアルと、必要でないリアルの使い分け」という点においては本編よりはるかに上手いことだけは確かだ。そしてガンダムSEEDに期待していた人は、たぶんこういったものを期待していたのだと思う。(まあ「どっちにしろ上手くない」という意見もあるだろうが…)

4:食い違う

本編の補完エピソードのはずの外伝だが、ここで補完される内容はあまり期待しないほうがいい。てかナチュラルとコーディネイターがいっしょに住んでる時点で別世界です。

ガンダムエース連載の「機動戦士ガンダムSEED ASTRAY」「X ASTRAY」は、コミックボンボンで多くのガンダム漫画を手がけたときた洸一氏が作画。主人公はジャンク屋の青年ロウ・ギュール。キラワープ問題についての説明を入れたことで話題になるなど、本編との関連性が強い。もうひとりの主役である傭兵の劾も登場し、外伝どうしをつなぐ役割もあるようだ。板ばさみとも言う。けど内容は結構普通のガンダム漫画。
個人的には、ちょっと他とのリンクにこだわりすぎてるきらいがあると思う。

月刊少年エース連載の「機動戦士ガンダムSEED ASTRAY R」は、一部で大人気だったコミック版スクライドを手がけた戸田泰成氏が作画。こちらの主人公もジャンク屋のロウだが、ときた版とは違うエピソードを描いている。こちらには劾が登場せず、あくまでロウ単独のストーリーという印象が強い。内容は「ガンダムの出るアクションもの」といった感じだが、人物も独自の画風で生き生きとしている。何気に女性キャラのサービスカットや、男のシャワーなども本編より違和感なく挟まっている。とりあえず読むには一番いいだろう。スクライドが好きだった人は普通に楽しめると思う。ロウたちがまるで別人なのとか、モビルスーツがもろに擬人化されてる表現とかもこのマンガでは味だ。
……ときどき絵柄が荒れすぎるんだよなぁ。メカの作画は大変だろうし、もう少しページを減らしたほうがよかったんじゃないかなぁ……

ザ・スニーカーでは、小説「機動戦士ガンダムSEED ASTRAY」が連載されている。作者はシナリオ担当の千葉智宏氏じしん。主人公は傭兵の叢雲劾(むらくも・がい)。正直言って小説としての出来はよろしくないと思いつつも、ここで語られる設定はなかなか面白い。技術小説といった感じである。イラストはブギーポップとかで有名な緒方剛志氏だが、こちらについては何も言うまい

電撃ホビーマガジンでは「機動戦士ガンダムSEED ASTRAY B」というフォトストーリーが連載されている。こちらも傭兵部隊を中心とした物語だが、続き物ではない短編もの。ショートストーリーと、それを再現したジオラマの写真で構成される。単行本はないが、モデリングマニュアルとかいうMOOK本に再録されてるらしい。
このページでは面倒なので取り上げない(おい)

とりあえず、気になる方は戸田版だけ読んどけば十分だと思う。刀で戦うMSの雄姿を見よ!

キャラクターや年表とか

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