「最後の忍道」は過去2度、PCエンジン用とゲームボーイ用に移植されている。しかしいずれも「ハード性能の限界」という制約の中で行われたアレンジ移植であり、オリジナルを完全に再現したものではない。そして2001年現在、「最後の忍道」の家庭用ゲーム機及びPC等への完全移植は未だ成されていない状態が続いている。
・・・現状では最もオリジナルの再現度が高い移植である。ハード性能を考えると相当レベルの高い移植度であり、制約の多い中移植を試みた開発スタッフは賞賛に値するだろう。
<全体的な移植度>
- 操作感の再現度は非常に高く、若干動きが軽めになった感触はあるものの、ほとんど同じ感覚でプレイできる。
- 武器のアクション・特性は完全に再現されている。
- 敵の性能・行動パターンもほとんどオリジナルと同じ。
- グラフィックについては、細かい書き込み・陰影のつけ方などの再現度は高いが、ハードの違いからか色使いが全く違うため、見た目の印象がかなり違う。
- キャラクターのアニメーションはほぼ再現されているように思うが、1コマ2コマ程度はカットされているような感じもする。
- 解像度の違いにより、画面比率がオリジナルと異なる(PCエンジン版は画面が狭い)。
- サウンドはBGM・エフェクト音共に別物。PCエンジンは音源がPSGであるため、FM音源を使用しているオリジナルの音色を再現することはハードの性能上不可能なのである。
<オリジナルとの違い>
- オリジナルと同じルールの「アーケードモード」と、PCエンジンオリジナルの「PCエンジンモード」が用意されている。
- アーケードモードはオリジナルとほぼ同じ感覚で、攻略もオリジナルのものが通用する。ただ、5面までの敵の配置及び地形はほぼオリジナルと同じだが、6、7面は大幅に敵の配置・地形が変更されていて、オリジナルとは別物となっている。
- PCエンジンモードでは一発死ではなく「ライフ制」になっており、また敵の配置がアーケードモードと一部異なる(全体に簡単にしてある)。また、エンディングがPCエンジンオリジナルのものとなっている(アーケードモードのエンディングはオリジナルと同じ)。
- 制限時間がなく、無制限になっている。
- 武器の表示形式が違う。
- 得点・残機数は死亡時や面の繋ぎでしか表示されない(ちゃんとエクステンドはする)
- 各面に章題がついた。
- ゲーム開始時にPCエンジン版オリジナルのデモがついた(オリジナルのものはカットされている)。
<細かい違い>
- 1面ラストの緑下忍地帯の井戸が出っ張っていない。安地も利かない。
- 落武者のアルゴリズムが全く別物になっており、こちらの座標に全く関係無く、一定間隔で定期的に刀を振る、というものに変更されている。
- 魔界半蔵戦で種子島が出てこなくなっている。
- 5面の毒煙の噴出地点がオリジナルと違う。
- 6,7面は出現する敵・その配置・地形が大きく変更されている。
- 爺がいない。
- 7面後半、忍者奈落の黒下忍の配置が全く違うものになっている(実は左の壁から黒下忍一人分開けたラインが安地になっている)。
・・・誰がどう考えても無謀な移植。いくらなんでもハード性能の差がありすぎる。
しかし驚くべきことにこのゲームボーイ版、オリジナルと同じ全7面構成で、武器もちゃんと4種類あって、爆竹の地面設置、鎖鎌の鎌回しも再現されており、分身もちゃんと2つまで付く。基本的な要素は一通り入っているのである。敵キャラも忍犬を除いて全て登場し、爺もグラフィックは雲水だが、行動パターンが再現されている。このように多くの「要素」は再現されているが、残念ながらプレイ感が全くの別物になっており(動きが異様なまでに軽い)、オリジナルと同じ感覚でプレイすることはできない。また画面のチラつきもやたら多いので、ゲームとしての出来ははっきり言ってかなり悪い。しかし、ゲームボーイの画面でパッと見て「最後の忍道」と判るというのはなかなかすごいことだと言えるだろう。
これらの移植版も現在では非常に入手困難であり、「最後の忍道」はプレイすること自体が困難な作品となってしまっている。この名作を後に伝えるためにも、家庭用ハードやPCへの「完全移植」が実現されることを筆者は切に願う。
(2001年12月 執筆)