悲願花
一輪の彼岸花。
美しい赤を魅せる、彼岸花。
でも、僕らはわかっている。
それははかない幻想。
病室で知り合った君と僕は、お互い死ぬ寸前。
風が吹いた。
彼岸花はその茎を揺らす。
それを見る僕らの目に、輝きはない。
どうして、こんな不幸の星の下に生まれてしまったんだろう。
彼岸花は、答えない。
求めても、届かない。
自由の羽が折れ、千切れても。
希望を失ってはいけないはずなのに。
彼岸花は、彼岸花は、彼岸花は・・
つぶれていた。
誰かが踏み荒らしていったのか。
車にひかれたのか。
つぶれていた。
それは、はかない幻想だった。
君が笑う。
僕も笑う。
あの彼岸花のように、最後まで。
さようなら。
ありがとう。
おやすみなさい。
頭がおかしくなったんだと思います。
自分の。許してください。
”はかない幻想”を彼岸花の赤ととるか、つぶれたことととるかはあなたに任せます。