キングダムハーツ〜KINGDOM HEARTS〜

 野村レジェンドに新たな1ページが・・・

 ことの発端は2000年初頭ぐらい。スクウェアとディズニーが提携というニュースだった。意外な組み合わせかな?だったのだが、しばらくして発表された新作の情報が度肝を抜いた。

 見たままを表現すると、スクウェアVSディズニーなんで野村さんが制作するの?!

 俺はなにひとつわかってなかった。そうさ…… こんなゲームが売れるはずがない、スクウェアついに壊れたか、と思ってたのは俺だけ…じゃなかったみたいだが。

キーパーソンは野村哲也

 野村さんはFF7のキャラクターデザインをはじめ、FFシリーズはじめ数多くのスクウェア作品で活躍している。
 「派手でアホな召喚獣エフェクト」「ヒロインを殺す決断(あとで弁解したらしい)」「趣味出過ぎのキャラデザ」など、悪名のほうが多いのだが。
 作品の私物化疑惑で評判を落としたりしてる。いやー私は悪趣味で好きなんだけど。シーモア老師の髪型胸毛サイコーっすよ〜。

 そんな野村さんが初ディレクターになるという。発表された画面写真は「ツインゴッデス」の再来のようなものだったし、「召喚獣ダンボ」「王宮騎士グーフィー」「FFキャラが登場」とか、不安のかたまりのような状況だった。

 ちょうどスクウェアも映画でピンチだったり、ディズニーはアトランティスを作ってしまったりと、スキャンダラスでもあったなあ。

狂気すら漂う?

 さらに売り方がヘンだった。チキンラーメン、バヤリース、三ツ矢サイダー。そして主題歌が歌多田ヒカル。オリコン一位になったので、いろんな場所でこの歌を聴くことになった。そのたびに大塚明夫さんの声のCMを思い出す・・・というなんだかよく判らんものの極地であった。ゲームの主題歌がオリコン一位って前代未聞じゃないのか?そうでもないのか。

 私は「キングダムハーツ」という作品を実際に見てみたかった。大して面白くないかもしれない。でも、スクウェアという会社のなにか(何かは不明)が見える気がした。PS2を買ってついでにFF10をやった。そして・・・

 そういえば、私はディズニーに詳しくない。このゲーム買った人の半分以上はそうじゃないのか。

「お前の心そのものが、世界を飲み込む闇になるのだ」

 最初、謎の精神世界のようなところをさまよったり、大塚明夫が登場したりと、ディズニー関係無いじゃんという予想された展開。しかしアクションRPGとしてはなかなか面白い。そう、アクションRPGだったのだ。前情報を見ても全然判らなかったぞ。具体的には戦闘マップと通常のマップに区別がなく、コマンドも共通してる。聖剣伝説にかなり近いが、3Dである(ブラブラのアレといい、野村さんは聖剣ファンだったのだろうか?)。ついでに南国のグラフィックもかなり綺麗。FF10がかすんで見える

 そしてこのゲームは疾走をはじめるのだ!レオン(スコールだ)との出会い!名ゼリフ「悪かったな」も再現!!つーかなんでこのセリフはクラウドと違って話題にならないの!?やっぱ8だからか?!!
 ドナルド、グーフィーとの出会いを経て、ディズニーワールドを旅することになるのだ!いやあ、こいつらと違和感無く会話できるスコールたちにびっくり。演出面での技量が圧倒的だ。絶対うまくいかないと思ってたので、これは意外。意外すぎる。

夢の対決

 ディズニーキャラとFFキャラが普通に会話できるとは思わなかった。そもそもよく考えてみるとディズニーどうしでもデザインの相違はあるわけで。ここでのFFキャラはあくまでディズニー作品の脇役としてまとまっている。野村さんの画風がディズニーに溶け込めたのだ。クラウドがベルセルク風になってても大丈夫なのがすごい(別の意味でまずいってか?)。

 このゲームは野村オンステージではなく、ディズニーオールスターだったのだ!インタビューでは最初からそう言ってたけど・・・

 ターザンが叫びながら突撃したり、ナイフで突っ込むピーターパンなど、ディズニーキャラがアクションRPGのキャラとして定着してる(戦闘シーンはちょっとやりすぎ)。イベントシーンが長すぎないのもいい。それぞれが主役張ってたほどアクの強いキャラクターたちがみんな活躍。逆に主人公やオリジナルの敵モンスターも影が薄くなることはない。スクウェア的でない、まともな会話ができてるのだ。ディズニー悪役陣が勢ぞろいするシーンでは、ディズニーファンならずとも妙な気分になることうけあい。というかディズニーに詳しくなくてもピーターパンくらい知ってるはずだから、そういう所で得してるという側面はあるけど。

 やはり演出の違いか。このゲームはFF目当てで手を出した人がディズニーに興味を持つほど、キャラクターがうまく動いてる。ついでに「名シーンを無理に再現しようとして破綻」ってこともない。シナリオを見るとスクウェア陣に混じって信本敬子さん(カウボーイビバップで有名)の名前が・・・納得できてしまうのがちょっと悲しい。

謎のグミシップ

 このゲーム、バカゲーだとばっかり思ってたら、ゲームそのものには突っ込みどころ少ないでやんの・・・

 そんな本作の最大にヘンな部分はこの「グミシップ」だ。「キングダムハーツ」は、いくつかの世界が宇宙に浮かんでて、それをグミシップと呼ばれる船で移動する。その船をパーツ単位で自分で製造できるのだ。
 そんなもの作ってどうするのか?エリア移動中にシューティングゲームになり、敵の戦闘機が攻撃してくるのだ。こっちの船もショットやレーザーで武装することになる。
 もう、これが楽しい。要するに強制ミニゲームであるうえに、シューティングとしてみると破綻してるほど簡単かつ単調なのだが。

 初期状態の船でも大して苦労せずにクリアできるだろうし、一度行ったエリアへはワープで行けるようになるからシューティングは必要ないのに、気がつくとフル装備した船(フジサワと命名)で試し撃ちに行く自分がそこにいる。
 「既存のモデルをベースにデスペルグミを前方にこれ見よがしにつけまくって耐久性向上。エンジンが足りないので右のエンジンは小さいのでごまかす」といった小学生のダイヤブロック(レゴは好かん)遊びみたいなことができるのだ。これは想像以上に楽しい。・・・もちろん真面目につくるのもいいですよ。

 でも、これってディズニーはおろか、スクウェアとも関係ないのでは・・・?(いちおう船の名前やデザインがFFっぽくなってるが)「楽しいから」って叩き込んだのだろうか。そうだとすれば、大いに評価したいさすがスクウェアだ!

これがいいゲームでは・・・

 本当に驚いた。野村さんが(まともな意味で)いいゲーム作るとは。それじゃ他のゲームの立場は?野村さんは絵描きだけでなく、ゲーム屋としてものすごく優秀だったってことなんだろうか。
 プレイして感じた事は、野村さんがかなりのディズニーファンではないかということぐらいだ。(違ってたらどうしよう)
 いやいや、もちろん野村さんが一人でつくるわけじゃない。でも中心人物がFFの元凶と思われていた人なのにFFみたいな破綻が見えないって・・・

 音楽もいい(ディズニーっぽいスクウェア音楽)。声が出るのがいい。グラフィックもいい。操作感もいい。その他諸々、全部いいぞ、このゲーム。FF10が必要ないぐらいに。問題を指摘しようにも、できない。それが問題だ。他のスクウェア作品ならいくらでも問題は浮かんでくるのに。・・・あー、召喚獣は要らなかったかも。

 だいたい、このゲームを真面目に期待してる人は結構多かったし、ネタにするつもりだった人(私もそうかな)もやってみると面白いということに気付いて驚いてたりする。これがスクウェアの根強いところなのか。それとも、ユーザーがスクウェアに求めてたのはこれだったのか。初日からスパロボの最新作と互角以上だったのは凄い。

 ……わからねえ
 結局スクウェアの何が判ったかというと、判らない会社だということ、なのだろうか。もしかして「なにか」(何かは不明)を求める人々がスクウェアを追いかけているのだろうか。

 このゲームはスクウェアが好きならディズニーが嫌いでも即買うべきだ。スクウェアが好きでなくても、アクションRPG(ただしアクション性はそんなに高くないかな)好きならかなりオススメできる。最近のスクウェアは嫌いだけど昔は好きだったって人でもOK。スクウェア嫌いな人はネタにするぐらいの気持ちで手を出すのもいいだろう。FFが好きでなくても構わないと思う。ディズニー好きな人は・・・これだけは判らない。たぶんOK、おおむねOK・・・(なにしろディズニー好きがどんな意味で好きなのか私はよく知らないのよ)

 いや、本当に面白い。このゲーム。
 ちなみに続編を思わせる部分があるんだけど・・期待はしないほうがいいでしょうが。うーん、もう少しスクウェア的やりこみ要素が欲しかったところはあるぞ。というか面白くてすぐクリアしてしまった。忙しくなる直前に慌ててクリアしたんだけど・・・

 結局、大塚明夫は誰の役なのか?それは自分の目で確認してほしい。「お前はまだ何も知らない・・・」

追記

 まず、ちょっとわかりにくいこと。私は野村さんのことが嫌いではない。でも問題人物だと思う。けど、問題を解消したら絵は上手いけど全然面白みのない人に成り下がるだろう。このまま突っ走ってください

 ところで、問題は思いつかないって書いたけど、その後でシナリオの問題点を思い出した。ヒロインのカイリを引き立てるためだけに呼び出されたかのようなディズニーキャラが数人いること。後半のネタバレなんで詳細は書かないけど…プレイした人にはわかるだろ?まあきついのはここぐらい。笑ってすませればいい問題だろう。

 さて、本作についていろいろ感想を探してみたが、ディズニーファンの人も好意的に見てるようだ。プレイした人は。ディズニーのファンサイトをまわってみたが、あまり話題になってない。ディズニー好きとゲーム好きがあまりつながらないのかな?・・・つまり買った人のほとんどはやはりFFファンの人、さもなくばFFファンかつディズニーファンの人なのだろう。
 というわけで、単にゲーム好きなディズニーファンの人も大丈夫みたい。でもゲームが好きじゃないディズニーファンなら・・・どうだろう。本作は面白いが、「ゲーム的なもの」にすぎないとも思うわけで。

 演出面では、多くのセリフがボイスつきなんだけど、ヘラクレスほかオリジナル吹き替えと違う声優も多いようだ。たぶん芸能人の吹き替えを全部とっぱらったんだろう。無理もない。
 あと、セルフィの声(「いくで〜」「あかん…」とか。関西弁にちょっと萌え)がユウナと同じで、レオンがアーロンなんだそうな。「やなおっさん」つながりか。「悪かったな」
 レオンくんの変貌ぶりはすさまじいと評判。FF8でリノア以上の嫌われ者だったのに、こんどは渋いとかなんとか…(主人公とヒロインが嫌われ者ってのもすごいが)
 ……冗談じゃねえ……

 最後に、著作権関係の話。よく考えてみると、ディズニーは著作権に非常に厳しい。しかしスクウェアはそういうところ無頓着(たぶん、ね)なので、FFの同人は多い。けどキングダムハーツ同人は・・・?ということが、これ書いてる発売1ヶ月の現時点で話題になっている。ソラ・リク・カイリの3人と某重要人物、それからハートレスたちはスクウェアなのかディズニーなのか?ドナルドやグーフィーのイラストは発表できないのか(ゲーム雑誌の投稿コーナーに載ってたけど・・・)?FFキャラも「キングダム仕様クラウド」とか危なくないか?ベルセルクの著作権は?
 …Check It Out!要注意だ。スクウェアはともかく、ディズニーはたぶん許さん(だから嫌われる)から、本作の同人誌はあまり見かけなくなるだろう。それどころかファンサイトもどうなることやら・・・

ENDさ…