ファンタジーじゃないのか?

「最近のFFはファンタジーじゃねぇ〜」というのはよく言われてたりするが、じゃあファンタジーってなんなのか考えてみたい。

ファンタジーってなんじゃ

 日本語で「ファンタジー」と聞くと普通は「剣と魔法が出てくる中世ヨーロッパ風の世界」が思い出される。ファンタジーRPGもまたしかり。英語の辞書を見るとFANTASY:空想、幻想、気まぐれとあるが、どうも少し違う。「中世風」は必要な要素になっているのだ。
 中世風ファンタジーの歴史は指輪物語にはじまる・・・らしい。私は指輪物語を読んだこと無いが。ほとんど「ファンタジー」の定義そのものといえる小説である・・・そうだ。魔法や怪物が登場する独特の世界を構築した・・・そうな。(前身の「ホビットの冒険」なら読んだんだけど)

ファンタジー→ファンタジーRPG

 そんな指輪物語の影響を受けたのかは知らないが、最初のTRPG(テーブルトークRPG)「ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ」は剣、魔法、ドラゴンが入り乱れる、まさに正統派ファンタジーといったものであった。・・・すいません、これもやったことないです(ただし指輪物語よりかなり新しい)。
 最初のがファンタジーであったためか、設定が使いやすかったのか、その後のTRPGもファンタジーが増えることとなる。ただしSFも多かったようだが。

 TRPGはやがてコンピューターRPGに派生する。初期の傑作、ゾーク(RPGじゃないけど)、ウルティマ、ウィザードリィはすべて剣と魔法と怪物のはびこるファンタジー世界である。
 日本でも「ドラゴンクエスト」をはじめ、RPGといえばファンタジーである。

 じゃあRPGにはファンタジーばっかりなのに、わざわざ「ファンタジーRPG」と時には銘打たれたりするのは何故か?もちろんファンタジーじゃないRPGがあるからだと言える(「メタルマックス」とかのこと。「頭脳戦艦ガル」などそもそもRPGじゃないのもある。)

「ファンタジーは死んだのか(某誌第1号)」

 さて、われらがFFはどうか。1の時点で「中世、剣、魔法、お姫様、伝説の勇者、そして悪の魔王」と見事にドラクエ系の基本を押さえている(魔王はちょっと違うか)。それが2以降になると若干変わっていくが、「剣、魔法、中世」の部分は5まではずっといっしょだ。(1の時点でスペースコロニーが出てたりして「すでにファンタジーじゃないじゃん」と某誌に書いてあったが、ロケットを買って宇宙へ飛び出すという初期ウルティマよりはいいんじゃなかろうか)
 変わり始めるのは6から。ここで「ファンタジーRPG」の基幹をなす、「中世」が崩れ去るのだ。7では魔法も怪しくなる。8では剣さえあぶない、というか7・8は科学文明がガンガン出てくる。そして9では戻ったのは周知のとおり。

中世の物語、現代の神話

 さてさっきから「中世ファンタジー」が飛び交ってるが、これの定義をはっきりさせていない。
 私の考えるのは中世暗黒時代テイストだ。「神秘、魔術、オカルト的なものが存在していた(信じられていた)」「神が大いなる力を持っていた」「偉そうな戦士(騎士サマ、勇者様)が鎧と剣で戦ってる」「支配者である国王がいる」「敵対国(魔王でもいい)との戦争」「やたら広い田園風景」といったところか。私の見たところいわゆるファンタジーRPGはだいたいこのフォーマットでいいようだ。わかりやすく言うなら、「ドラクエみたいならファンタジーRPG」でいい。
 こういう定義なら6以降のFFは完全に「中世風ファンタジー」ではない。

 しかし「FFはファンタジーでない」と言われるとどうも違和感がある。なぜか?中世風でないファンタジーもあるからだ。(「スターウォーズ」は確実にファンタジーだと言いたい)「狭義のファンタジー(中世風)と広義のファンタジー(中世にこだわらない)が存在して、FFは後者である」と考えると矛盾が無いとおもう。

 別に暗黒時代でなくてもいい。私の思う「(広義の)ファンタジー」の定義は、「『楽しければいい』的ノリがあること」だ。おそろしくいいかげんな上「的」とか「ノリ」とかが入っていてあいまいだけど、私にはこれしか考えられない(もちろん優れたファンタジーかは別問題)。
 この定義ならFF7は問題なくファンタジーだし、FF8も問題はあるけどファンタジーになる。

 それから中世風でないくらいでファンタジーを区別したくはない(和風だっていい)。科学文明だって錬金術から発展したのだから魔術の兄弟みたいなものだ。機械文明だって「てこ」と「くるま」の親分みたいなものだ。オカルトだってまだまだいっぱいあるぞ(私も大好きだぞ)。ようするに現代文明と中世の差は見た目ぐらいしかない。よって「文明がハイテク」とか「魔法がない」くらいで「ファンタジーじゃない」等とは言えまい。

 しかし一方でファンタジーじゃないという意見もよく分かったりする。理由は簡単で、「見た目が違う」からだ。やっぱ末弥純さんの描いたような「中世暗黒時代ノリ」のファンタジーRPGって格好よくて気分がいいんでありまして。ファンタジーはこうでなくっちゃ、というのは非常によくわかる。「指輪物語しか認めん」というのも考え方としては否定されるべきではない。
 ただしこれも「ファイナルファンタジー」のタイトルを否定する材料にはならない。なぜならFFシリーズはすでに「FINAL FANTASY」という別のジャンルを確立しているともいえるからだ(映画FFは間違いなくこのジャンル)。好き嫌いは分かれるだろうが。

 かくして「ファンタジーは中世でなくてもいい。ただし中世風のは好きだ」というのが今回の私の結論。なんかわかりづらい文章ですが、これでお終い。

註1:ここでいう「中世」とは産業革命より前の時代というようなアバウトな意味。歴史的にはちょっと変かもしれないが他にいい呼び方もないし。
註2:古いゲームを引き合いに出したが、私がプレイしてないのも多いので注意。
註3:もしかしたら「(中世風)ファンタジーRPG」は減ってるかもしれない。某誌第1号が指摘したように。
註4:ついでに言っとくなら私が思うに日本語で「ファンタジーRPG」は「ファンタジー」と少し違う。ドラクエ的でなければファンタジーRPGといえなさそうな気がする。その意味ではFF7は絶対に「ファンタジーRPG」ではない。さらに言うならファンタジーRPGはファンタジーでなくてもいい。

もくじだ。