「作戦は一刻を争う」

世界を縮めた男、マルキオ導師を知っているか。

本編において、彼が登場した時間は全部合わせても数分程度である。キラと和平文書を運んできて「SEEDを持つもの」について発言したこと、アスランになにやら孤児のことを言っただけ。だが、どうしたわけか彼は多くの視聴者に圧倒的なインパクトを残した。
彼がこの物語のカギを握るイベントを演出した『能力者』だからだ。彼がボソンジャンプ(あるいはアルタースタンドなどの特殊能力、どれでもいいが)できなければ、キラとラクスが再会してフリーダム強奪事件が起きることもなかった。

さて真面目な話、彼とキラがワープしているように見える演出が問題なのは言うまでも無い。あれを見た私は、SEED世界には知られざるワープ能力か超技術が隠されているのではないか真剣に考えたが、どうも事実はそうではないらしいことはフリーダムの移動速度やアスランの乗ったシャトルの速度から明らかになってしまった。……ちくしょう
ともあれ、そのときのキラ生存エピソードがアストレイ(ときた版)で説明されたのは結構知れ渡っているようだ。だから「本編で語るべき内容を外伝に丸投げした」などと批判されることも多い。
……そうなのだろうか?果たして本当に外伝で説明するために演出を飛ばしたのだろうか?

キラワープに関する、本編で起きた事実:
まず、イージスの自爆攻撃でストライクの反応が消失。コクピットは爆風でぼろぼろだが、カガリが来た時にはキラはいなかった。その後アークエンジェルがアラスカに着いたのとほぼ時を同じくして、ラクス邸のカンカン照りの部屋でキラは目覚める。その後説明されたのは「キラがマルキオ邸前に倒れていた」ことと、「キラを超スピードで運んだのがマルキオ導師である」こと、である。生きていたのはキラだから構わないとして、どうやってコクピットから抜け出たのか、どうしてマルキオ邸にたどり着けたのかは不明。
これが超スピードである根拠だが、まずアークエンジェルを追いかけていたディンがアラスカ近くまで追跡できたことから、キラの移動する時間はディンの稼働時間程度しかないのである。もちろんディンにニュートロンジャマーキャンセラーなど搭載されていない。ディンが途中で入れ替わっていたとか、空中給油しながら追い続けていたとか、実体の無いディンの幽霊だったとかいうのも考えにくい。
時間を稼ぐ場所があるとすれば、「ディンがアラスカ近くで引き上げてから、アークエンジェルがアラスカ基地にたどり着くまで」のほとんど一瞬だけである。
他にもフレイがずっと部屋に引きこもっていたことや、ディアッカが医務室までたどり着く前であることなどから、どんなに多く見積もってもキラに与えられた時間は1日程度である。

キラにまつわる、外伝で起きた事実:
もともとロウはマルキオ導師に用事があったので、レッドフレーム単独でマルキオ邸を目指していた。輸送機を使わなかったのは、レッドフレームを改造した直後なので性能を試す意味もあったかもしれない。(そしてマルキオ邸はオーブからMS単独で到着できる距離に存在していることになる)
マルキオ導師の家の近くで、ロウはキラとアスランの戦闘を目撃。イージスの爆発に巻き込まれて、レッドフレームとロウは爆風だけでも結構な痛手だったようだ。
傷ついたストライクは、雨に打たれて泣いているようだった。だがストライクのコクピットでは「緊急(エマージェンシー)シャッター」(一部では「セーフティシャッター」の名で有名なやつ。詳細は完全に不明だが、明らかに適当設定)なる謎の装置が作動していたらしく、コクピットは蒸し焼きになったものの、キラはかろうじて生きていた。キラを助けると、そこでストライクもフェイズシフトダウン。ロウは「お前も最後まで主人を守ってたんだな」とストライクをねぎらった。
レッドフレームはバッテリー切れで、キラを担いでいくロウ。傷ついたロウはマルキオ邸前にキラを放り出し、自分は扉を倒れこむように開けてマルキオ邸内部に助けを求める。外に倒れているキラをマルキオ導師と子供たちだけが見つけて、本編のカメラにロウたちが映らないようにした。
傷だらけのキラをマルキオ導師が手当てする。そしてマルキオ導師はラクス様からキラのことを聞いていたらしい。マルキオビジョンにはラクスとフリーダムが映る。
そして、マルキオ導師とロウたちはオーブのマスドライバーに来ていた。意識を失ったままの怪我人のキラをカプセルに詰め、オーブにも内密で宇宙へ運ぼうとするマルキオ導師にキサトが疑問を投げかけるが、マルキオ導師はプラントにキラをよく知る人間がいて「その方に会わせるのが最良の道と思う」と告げる。
つまり、この導師はキラにフリーダムを渡すために運んだのであろうか……

検証

キラの移動速度:
外伝で描かれたのは、「キラがマルキオ邸に行くまで」だけであり、結局「キラがプラントへ短時間で行く方法」はマスドライバーであることしか判らなかった。さすがにフォローしきれなかったようだ。
これは、後に登場するジャスティスなどの速度も同等であることから考えて、この世界には無限大の加速ができる技術(ボソンジャンプと変わらない気も…)が存在するのか、さもなくばマルキオ導師とキラとアスランまでもが使える何らかの特殊能力が発動したか……
というか、プラント入り口からラクス邸のカンカン照りの部屋まで運ぶ時間だって馬鹿にならないと思うが、結局の所「マルキオ導師だから問題ない」という解釈しかないだろう。

カメラの位置:
まずイージスとストライクの決戦の脇にもう一機ガンダムがいたというのも奇妙だが、何よりおかしいのはロウがキラを放り出して自分だけマルキオ邸に入っていったことだ。キラを放り出すほどのダメージがあったロウが、わざわざマルキオ邸に入っていく理由は「カメラに映らないため」以外考えられない。それともロウはマルキオ邸の入り口の階段を、キラをかついだまま上るのがつらかったのか?

無敵のシャッター:
まず、コクピットの装甲が裂けた時だけしか役立たない装置とはなんなのだろう?そしてこの装置の詳細は本編で登場していないのはもちろん、外伝でも名前しか出ていない。そして本編のコクピットのただれ具合は「蒸し焼き」どころではない。だがキラのスーツのダメージはそれほどでもない……

で、私が思うのは「重要な部分を外伝に投げた」わけではなく、「本編では特に重要でないと判断された過程を、外伝が埋めた」のではないかということである。
つまり、キラの移動速度などさしたる問題ではなくて、こんなもの疑問に思うほうがどうかしていたというわけだ。そこをわざわざ描写する外伝は、はっきり言って本編の蛇足でしかないというわけだ
…なわけあるか!

だが、とにかくここの外伝ストーリーは非常に後付けくさい。これで本編の謎が解けた!と満足できるようなものとは言いがたく、そういう意味で本編と外伝の連携はなっていないと言いたいのである。これだけのことを言うのに時間がかかってしまった
それにしても、大変だったストライクを誉めてくれたのはロウだけだった。可哀想なストライク、可哀想なイージス。

それはそうと、本編の小説版は外伝とつなげようとしているらしいので驚いた。3巻にはロウたちを思わせる記述が少しだけあるのだ。
しかし4巻は注目のキラワープから始まるようだが、3巻と4巻の間に挟みこんで吹っ飛ばしてしまうのではないかと予測。

11/12追記:小説版キラワープは、タイミングをずらすことで違和感を最小限に抑えた模様。ジャンク屋についての記述も少しだけ存在。

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