FFのアビリティ制について

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FFシリーズの中でアビリティを採用しているのは、FF5、FF8、FF9、FF10の4作。FF7のマテリア制は実質的にアビリティ制の中に含めてしまっても良いだろう。

DQ6を比較題材にFF5のアビリティを考察する

FFシリーズに『アビリティ』という言葉が初めて登場したのはFF5のときだ。アビリティは、FF3以来の復活となるジョブ制の付加要素として登場した。
FF5のジョブ+アビリティ制の魅力は、似たようなシステムを採用するDQ6の職業+特技呪文制と比較するとよく分かる。

 DQ6 FF5 
ジョブとアビリティの不自然な組み合わせ 例えば魔法使いのくせに正拳突きを連発するなど、そういう不自然なことに対する違和感が強い。 空高く飛び上がる黒魔道士、剣をぶんぶん振るう白魔道士など、そういう不自然な組み合わせを実際に映像としてプレイヤーに見せつけたことで、ある種のネタに昇華させた。 
設定的な裏付け なぜ短期間に次々転職できるのか不明。DQ3式のほうが納得できる。 ジョブとは、クリスタルの力を媒体にして過去の英雄の力を借りているだけだ、という設定がある。クリスタルの神秘性を高めるという意味でも一石二鳥だな。 

このように色々と細かい部分でのアドバンテージはあるのだが、最も重要な差はプレイヤーに負わせる負担の量である。
例えば、最上級の蘇生魔法を使いたいと思ったとき、

DQ6ザオリクの取得には、僧侶と魔法使いをマスターしたうえで、賢者になって熟練度を稼がなければならない。 
FF5店でアレイズを購入すれば、あとは白魔道士に転職するだけで使える。 

この差は大きい。要するに、

DQ6特技や呪文の取得は実質的にノルマ。しかも、経験値と異なり、メタル系で一気に稼ぐこともできない。 
FF5ジョブ能力だけでも十分にクリア可能。アビリティ集めは任意要素。 

一見するとよく似ているDQ6とFF5のシステムは、実は根本的な立ち位置が違うのである。
FF5のアビリティはFシリーズ史上最大の“おまけ”だ。
だからこそ楽しいのではあるまいか。
 

FF5とFF7のアビリティ取得システムの位置付けの違い

FF7はマテリア制を採用している。細かな違いは多々あれど、全体的に見て、FF7のマテリア制もアビリティ制の一員と考えることが出来よう。
ただし、同じアビリティ制でも、FF5とFF7ではその立ち位置が大きく違う。その最大の理由は、
複数のマテリアを同時に装着できる、
ということだ。
FF7では、ごく普通に遊べば、誰もがだいたい同じような組み合わせになるよう設計されている。そのため、FF5で大きなウエイトを占めていた『何から先に取得するか』という要素が希薄になっている。だが、この1点のみを持ってFF7のマテリア制はFF5のアビリティ制に劣るというレッテルを貼ることはできない。アビリティという概念を使って表現したい面白さの方向性が違うからだ。

FF5攻略情報なしで遊んだ場合、ナイトや白魔道士といった特性の分かり易いジョブを後回しにして、有効性未知数の狩人や薬士といったジョブを育てるのは勇気が要る。そんなプレイヤーの心理を利用し、マイナーなジョブほど乱れ打ちや調合といった強力アビリティを配置している。 
FF7複数のマテリアを同時に装着できるので、有効性未知数のマテリアでも気軽に育成できる。だから、『何を先に取得するか』ではなく『手元にあるマテリアをどう組み合わせるか』が重要になってくる。例えば、カウンターマテリアを6つ装着して6連続カウンターといった無茶な組み合わせも、マテリアを複数同時に装着できるからこそ可能な芸当だろう。 

短くまとめると、

FF5どのジョブのアビリティから覚えていくか、という手探り感を重視。 
FF7手元にあるマテリアをどう組み合わせるか、というカスタマイズ性を重視。 

といったところか。
 

じゃじゃ馬なFF8のアビリティ制

FF8のアビリティ制は、FF5やFF7のアビリティ要素とは根本的に方向性が違う。FF5はジョブ制がメインであり、アビリティは楽しいおまけだった。FF7はマテリアを同時に育てることができるので『必須マテリアを育成していなくて詰まった』なんて話は殆ど聞かない。つまり、
FF5やFF7のアビリティはリラックスして楽しめる“お楽しみ”。
一方、FF8のアビリティ制は、
適切に選択しないとゲームが詰まる“攻略対象”。
具体的な事例をだそう。
一般にFF8のマイナス面とされているのは、

  • 通常攻撃が弱すぎて、演出時間が長すぎる召喚魔法に頼らざるを得ない
  • ドローを何回も行わねばならないので戦闘が退屈

といったところだが、

  • ちから+20〜60%をしっかり取得し装着すれば、逆に召喚魔法なんて必要なくなる程に通常攻撃が強くなる。
  • 精製アビリティを活用すればドローしなければいけない機会が半分以下になる。

という風にフォローが用意されている。ただ、そのフォローが選択自由なアビリティという形で用意されているということは、
適切にアビリティを取得しなければ詰まる、
ということでもある。
そして、FF8のアビリティ制には、うっかり者が嵌まり易い罠まで用意されている。

  • 例えば『暗黒』と『自爆』は旧作にも登場した技。だが、旧作とは効果も価値もまるで違う。
  • 『暗黒』…FF4では、威力の弱い全体攻撃だった。FF8では敵が最大3体までしか同時に出現しないので必要ないな…という判断に陥りがちだが、FF8の『暗黒』はなんと威力3倍の通常攻撃。みすみす逃すのは勿体ない。
  • 『自爆』…旧シリーズでは、使い勝手の悪い青魔法の代名詞だった。ところがFF8では、4桁リミット制限がないため、最もお手軽に数万もの大ダメージを与えることができる攻撃技となっている。あのアデルすら一発撃沈可能という豪快な技だ。
  • 最大の問題は、暗黒も自爆も、その仕様がチュートリアルでしっかり説明されているということだ。名前の知ってる技だからといってチュートリアルで確認する手間を怠ると陥り易い罠だと言える。

さらに、FF8のアビリティ制には、推理の要素まで搭載されている。

  • チュートリアルには一部の隠しアビリティを除き、大半のアビリティの一覧が用意されている。
  • 効率の良いプレイを実現するには、どのアビリティから何が派生するかを推理する必要がある。
  • 『カード→カード変化』の組み合わせは分かり易い。
  • 『エンカウント半減→エンカウントなし』も基本中の基本か。
  • 『ちからJ→ちから+20〜60%→ちからボーナス』も比較的分かり易いかな。
  • 『顔馴染→ショップ呼び出し』などは少し発想の飛躍が必要か。
  • 『GFHP+10%→GFHP+20%→GFHP+30%→GFHP+40%』という逆の意味で推理が必須な組み合わせもある。このルートを進んでしまうと膨大なAP(計450)が無駄になってしまうので、要注意。
  • このような推理要素が多数存在する。

要するに、

  • FF8のアビリティ制は、FF5やFF7のものとは存在意義そのものが違う。
  • FF5やFF7のノリでFF8のアビリティ制を楽しもうとするとヤケドする可能性が高い。
  • プレイヤーの側で頭の切り替えが必要。

なので、これからFF8を遊ぼうという人は注意しよう。
 

独自の道を行くFF9のアビリティ制

FF9のアビリティ制は、またまた、それまでのFFシリーズの同名要素とは別の道を行く。
正直な話、FF9のアビリティ制は、それ単体では大して面白くないシステムだ。

  • アビリティを取得するまでは『なにを装備するか』というカスタマイズ性があるが、一度取得してしまえば忘れることがないので、最終的なコマンドアビリティのカスタマイズ性は殆ど無い。
  • サポートアビリティには魔石ポイントという形でカスタマイズ性が搭載されているが、“特定のアビリティがないと絶望的”なボス敵が結構いるので『自分に合った組み合わせを選ぶ』よりも『相手に合わせた組み合わせを選ぶ』傾向のほうが強い。にも関わらず、戦闘中の脱着が不可能なため、プレイヤーにストレスを与えてしまう機会が多い。

これだけ見るとFF9のアビリティ制は駄目システムに思える。だが、実はFF9のアビリティ制の真髄は入手段階にある。
FF9のアビリティは、“宝捜し”のためのモチベーション要素。
だ。
なにしろFF9の主人公ジタンはシーフ系キャラ。そのためか、FF9では宝物にまつわるこだわりが尋常ではない。

  • Disc4で街に戻れなくなったFF8の教訓から、街も洞窟も舐めるように探索。
  • 成功率の低さにも負けず「盗む」コマンドに果敢に挑戦。
  • あの大変なチョコボ関係のミニゲームで頑張ってアイテムを収集。
  • 貴重なアイテムを合成屋で不可逆な合成にチャレンジ。

こういった努力を重ねて必死に宝箱を集めさせるための餌がアビリティな訳だ。あまりに大胆すぎる発想の転換と言えるだろう。
 

構造崩しの極みといえそうなFF10のアビリティ制

これまでのFFでのアビリティと能力値の関係は、アビリティが主、能力値が従だった。ところがFF10は、それまでの主従関係を逆転させ、能力値を主、アビリティを従の関係にしてしまっている。

  • FF10のアビリティは敵に対する相性が明確で、パーティー内で誰か一人が取得していれば十分なアビリティが多い。複数キャラ取得する必要があるのは回復系のアビリティぐらいか。
  • 各キャラとも初期位置から素直にルートを進んでいけば、エンディングを迎える前後には殆どのアビリティが揃うようなバランスになっている。
  • FF10のスフィア盤システムが提供するメイン要素は、アビリティによるキャラのカスタマイズ性ではなく、スフィア盤そのものをカスタマイズして能力値を思うように調整することだ。

こういう大胆な構造崩しが使われている以上、FF10のアビリティ制を他のシリーズと比較することはナンセンスだろう。
ただ1つ、筆者が素晴らしいと思うのは、
単にクリアするだけなら、スフィア盤のカスタマイズというディープな世界の、存在自体を知らなくて済む、
という点だ。アビリティを適切に選択しないと楽しく遊ぶことすら難しかったFF8とは、まったく正反対のアプローチである。
 

まとめ

以上の考察をまとめると、

FF5好きなアビリティを取得するために頑張る面白さ アビリティはあくまでジョブのおまけ。興味が無ければ頑張って取得する必要がない点も◎。 
FF7自分の戦い方に合わせてカスタマイズする面白さ カスタマイズ性を突きつめず、無難な組み合わせに徹していても十分に楽しめる点を評価したい。 
FF8チュートリアル片手にあれこれ取得順を練る面白さ アビリティの選択に失敗すると悲惨な目に合う可能性が高い。その意味で危険。 
FF9アイテムを集める面白さ アビリティはアイテム探しのための餌みたいなもの。問題はアイテム探しの労力に比べて餌の旨味が殆どないこと。 
FF10能力値カスタマイズのおまけ 育成や戦闘に興味ないプレイヤーは能力値のためのスフィア盤そのもののカスタマイズの存在そのものに気づかないところがスゴイ。スフィア盤の視認性や操作性の悪さだけが惜しい。 

一口に“アビリティ”と言っても、その面白さが別方向を向いているね。FF10-2やFF12では、どんな路線になるか楽しみだ。


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