まだイメージ固めの段階です。
ソフィア |
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ライアン |
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アリーナ |
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クリフト |
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ブライ |
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トルネコ |
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マーニャ |
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ミネア |
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ピサロ |
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ロザリー |
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エビルプリースト |
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ヘルバトラー |
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アンドレアル一族 |
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ギガデーモン |
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大目玉 |
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カロン |
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ライノスキング |
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闇の洞窟の総襲撃 |
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メタルスライム |
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海の魔物たち |
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終盤 |
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シーン案。
ミントスにて | 勇者一行はブライたちの隣の部屋に泊まった。ブライは隣の部屋の雑音(主にマーニャ)に苛立ち、思わず怒鳴り込む(「静かにせんか、痴れ者どもッ!こちらには病人がいるんじゃッ!」)。それを聞き、回復呪文の心得がありますから看病させてくださいと言うミネアとソフィア。彼女たちがその若さでベホイミという、エリート神官のクリフトですら取得していない高度な回復呪文を取得していることに心の中で驚くブライ。特に一見戦士のように見えるソフィアがそれだけの回復呪文を使えることから彼女は只者ではないと思い、パデキアの種の回収を頼む。 |
牛のカルビン号 | ←の話題はぜひ出したいなぁ。どう組み込むかな? |
トルネコの見せ場 | 「炎の戦士ッ!?」。パーティーに緊張が走った。炎の戦士の強さは大灯台で体験済みである。吹き荒れる炎に苦しむ面々。「皆さん、ここは私にお任せを!」。トルネコが正義のそろばんを片手に馬車から飛び出した。正義のそろばんから光が放たれ、みるみる炎の戦士は消えていく。その夜。夕食後の団らんではもちろん今日のトルネコの活躍が話題に昇った。「正義のそろばんには何度も命を救われました。私にとって、このそろばんは宝物ですよ。金額にするとたかだか1500ゴールドの代物ですが、値段は関係ありませんな」。「…噂に聞く天空の剣は、これ以上の宝物だと信じています」「それは商人としての勘ですか?」「いやいや、一介のコレクターとしての勘ですよ」。 |
サントハイム関係の案 |
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ソフィア |
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ライアン |
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アリーナ |
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ブライ |
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クリフト | ・彼の中で信仰がどの辺の位置付けにあるのかよく考えないとなぁ。 |
マーニャ |
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ミネア |
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トルネコ | ・世界の珍しい話を語ってパーティーを和ませるとか。 |
おしゃべる系 | アリーナ、ブライ、マーニャ、トルネコ? |
聞き上手系 | ソフィア、ライアン、クリフト?、ミネア |
既に1パーティーとして完結してしまっているサントハイムの面々をどうやって勇者たちに馴染ませるかが課題だな。
アリーナはこんな方向でいいだろう。クリフトとブライはどうするかな?
…もしかして変わらない?
勇者抹殺部隊に参加したギガデーモン。未熟な勇者なぞ楽勝だと侮っていたが、勇者(シンシアが化けたもの)の予想外の善戦に驚く。…というようなシーン。
なんと、完全回復呪文ベホマを取得しているとは…!
勇者の思いがけない戦いぶりにギガデーモンは戸惑った。
エビルプリーストの発案で勇者捜索を開始し、もう10年近くが過ぎている。人間の成長速度は魔族のそれより遥かに速いというが、もしもこの10年のあいだに既に勇者が地獄の帝王を打ち破るに足る実力を身につけていたとしたら…。
棍棒を持つ腕が震えてきた。
勇者がまだ未熟なガキだと思っていたからこそ、勇者討伐作戦に参加したのだ。楽な任務だと思ったからこそ、襲撃隊に志願したのだ。…俺の見通しは甘かったのか。
頭部の突起のあいだから冷や汗が流れはじめた。
…逃げよう。
ギガデーモンは咄嗟にそう思った。地獄の帝王を打ち破るという勇者に、自分が勝てる訳ない。
返り血を舐めたギガデーモンは目を丸くした。
「こりゃあ人間の血じゃねえ…」。
ギガデーモンは誰にも聞こえるでなく呟いた。
「どこにも人間の味がしねえ…」。
ギガデーモンはブツブツ呟きながら肩を回した。
「この味…以前に一度だけ味わったことがある…」
ギガデーモンは不気味な笑みを浮かべ、偽勇者と目が合った瞬間に飛び掛かった。
「こいつは勇者じゃねえ、エルフだぁーーーーーー!」
間違いねえ! こいつは勇者じゃねえ! 偽者だ! エルフが化けた偽勇者だ! 道理でおかしいと思ったんだ! ベホマなんて強力な呪文が使えるくせに、剣の振るときに腰が引けているじゃねえか! なにがベホマだ! なにがスクルトだ! ばっかり得意なひょろひょろエルフなんぞにこのギガデーモンさまが負けるわけねえんだよ! てめえの魔力が尽きるまで、何度だって叩きのめしてやるぜぇーーーーーーー!
ギガデーモンは心の中で叫びながら偽勇者に向かって棍棒を振り降ろした。
実戦経験乏しい偽勇者はその一撃を剣で受けようとしたが、人間の胴体ほどもある巨大な棍棒相手ではどうしようもない。剣は折れ、そのまま棍棒は勇者の腹部を強打した。
衝撃で飛ばされた偽勇者は壁に叩きつけられ、地面に倒れ込む。
ギガデーモンは手下のベレスと共に深手を負った偽勇者を追跡する。追跡しながら、ちっぽけな脳味噌で考える。
ピサロさまは殊のほかエルフに御執着だからな…あれをエルフと知りつつめった打ちにしたなんてピサロさまの耳に入ったら、恩賞どころか打ち首になりかねんぞ…それよりも…それよりもだ…あの勇者を本物ってことで押し通せば三階級躍進…あのエビルプリーストの野郎の上に立つことが出来るんだ…。
腹は決まった。
ギガデーモンは横にいたベレスを口封じのために叩き潰し、村のあちこちに火を放ちながら、偽勇者のもとへと向かう。
「…どこの馬鹿が火をつけたんだ?」
村が火の粉に包まれる中、ピサロは朝方に村で見たエルフの娘を探していた。なぜエルフが人間ごときの味方をしているのか知りたかったからだ。
「お前のような青二才に心配される覚えはないわッ」。
ブライは減らず口を叩いたが、片膝をついたままだった。
クリフトはデスピサロの口にくすぶる炎を見た。
「炎ッ!炎ですッ!グレートライドン並みの炎ですッ!」。クリフトは叫ぶ。
クリフトの言葉が終わらないうちにデスピサロの口から激しい炎が放たれる。その恐ろしい威力はヘルバトラーとの戦いで経験済みだった。
デスピサロの踏みつけで全身の骨をガタガタにされたブライに、あの恐ろしい炎に耐えきれるだけの体力は残っていない。
「マ…マヒャドッ!」
ブライは炎を見た瞬間、反射的にマヒャドを唱えた。もちろん、デスピサロではなく激しい炎に対してである。マヒャドの冷気で激しい炎を相殺しようというのだ。
本来ならば呪文の発動には数秒の溜めが必要である。相手の吐き出す炎や吹雪と同タイミングで呪文を放ち、相殺するという誰でも思いつきそうな行動が未だ定跡化されないのは、“溜め”の存在と、溜めが完了したあとは本人の意思とは関係なく即座に発射されるという呪文特有の性質のためだった。
だが、冷気系呪文を極めたと言われるブライは、マヒャドの溜めを瞬間的に切り上げ、一気に発動したのだった。もちろん、いくらブライとは言え己の意志で自由にそのような芸当が出来る訳ではない。いわゆる火事場のクソ力とでも言うべきものが、この老魔術師に働いたのである。
「あぁッ、寒気が弱い…!」
ブライのマヒャドを見た瞬間、ソフィアが言葉にならない言葉を上げた。やはり、瞬間的にマヒャドを放つには無理があったのだ。本来の半分ほどの威力もない、小さな小さなマヒャドは、呆気なく炎に巻き込まれていく。
ブライは杖の先からマヒャドを放ちながら目を瞑った。…ミネアの普段聞きなれない昂ぶった声を聞くまでは。
“フバーハ”。
それは、最後の夜にミネアが必死に取得しようとしていた呪文だった。敵の炎や吹雪を薄い光のベールで包むという、あのクリフトですら取得できなかった防護系の極限呪文である。
間一髪、ミネアの放った光のベールがブライを守った。
この間、僅か4秒。決死の攻防だった。
不完全なマヒャドとフバーハによって大きく軽減されたとはいえ、その業火は、傷だらけのブライには耐え難い苦痛だった。
並みの者なら即座に気絶したであろう。だが、ブライは耐えきった。激しく肩で息をしながらも立ち上がった。
「マヒャドッ!」
立ち上がったブライは即座に、デスピサロの顔面に向けて凍てつく冷気を浴びせる。激しい炎で身を焦がされながらもブライは更なるマヒャドの詠唱を行っていたのだ。一行はブライの凄まじい闘志に震えた。
不意のマヒャドによろけるデスピサロ。ライアンはその隙を逃さない。ライアンの剣は確実にデスピサロの右腕を切り落とす。デスピサロの肉体はすぐさま再生を始めるが。
「勇者殿、今ですッ!」
ライアンの言葉を受けてソフィアが動く。全身の体重を込めて、再生途中の傷口に天空の剣を突き刺す。気合と共に凍てつく波動を発動させ、デスピサロの再生を食い止めた。
凍青白い閃光にソフィアは跳ね飛ばされたが、よろけることなく着地したソフィアは油断なく天空の剣を構え直した。
右腕の再生に失敗し逆上したデスピサロはソフィアに向かって走り出す。ブライと同じように踏み潰すつもりなのだ。
だが、ソフィアに向かって一直線に走るデスピサロは隙だらけだった。
「爺は馬車で休んでいてッ!」
声が響くよりも早くアリーナは馬車から飛び出した。渾身の力を込めた痛烈な拳がデスピサロの頬を直撃する。
…まさかデスピサロに、これほど見事な拳が決まるなんて信じられない!
当のアリーナ自身がそう思ってしまうほど見事なヒットだった。
アリーナはよろけたデスピサロを見逃さない。その巨大な図体に半比例して貧弱な脛を全力で蹴り倒し、もう片方の腕で一気に地面に叩きつけた。
轟音と共に地面の破片と砂埃が舞う。
ライアンたちは盾を使ってその破片を防がねばならなかった。
ソフィアは地面にめり込んだデスピサロの再生を止めようと右手を上げて走り出す。
だが、アリーナが引きつった声でソフィアを制止した。ソフィアが動きを止めたとき、アリーナはソフィアの横、あで一足飛びで戻っていた。
アリーナの額に大量の汗が滲み出ている。それが運動による生理的作用に依るものではないことは、引きつった彼女の顔を見れば明らかだった。
「どうしたの?」
「あいつ…また進化する…」
ソフィアは生唾を飲んだ。今度は果たしてどのような変化が起きるというのか。現状ですらパーティーは限界に近いのだ。これ以上の進化をされたら…もう…。
一行が油断なく構えた状態でデスピサロの進化は始まった。先ほど切り落とした腕が再生していく様に、馬車の中で様子を見ていたブライは舌を打った。
腕を再生させたデスピサロは、さらに激しく身体を震わせはじめた。
「あ…頭…!」。
マーニャが馬車から身を乗り出し、デスピサロの頭を指す。デスピサロは激しく身体を揺らしながら、亀のように頭を胴体から伸ばしはじめていた。間違いない。ついにデスピサロは完全体になろうとしているのだ。
進化途中のデスピサロへの打撃は無駄であることは聞いている。それでもライアンはデスピサロに飛び掛かった。このライアンの行動は理屈や経験に依るものではなかった。本能が完全体デスピサロを怖れ、ライアンの身体を突き動かしたのだ。
だが。
ライアンの渾身の一撃は不幸な結果をもたらした。見えない結界に打撃を止められ、跳ね飛ばされるライアン。ソフィアは身を呈してライアンを受け止めたが、奇跡の剣は無残にも真っ二つになっていた。
全員に鳥肌が走った。
あの奇跡の剣が、いとも簡単に壊れてしまうとは。
ソフィアはベホマズンを唱え仲間たちの傷を癒す。クリフトはスクルトを再び唱え、敵の攻撃に備える。ミネアは馬車の面々にベホマやフバーハを掛け、緊急事態に備えた。トルネコは馬車の中からはぐれメタルの剣を探し出し、ライアンに投げ渡した。
進化中のデスピサロにライアンの一撃すら無効だと知った面々は、せめてデスピサロが完全体になる前に体勢を立て直そうとしたのだ。
と、そのとき。
恐ろしい咆哮が聞こえた。
灯台タイガーが連発したような、人を驚かせるような咆哮ではなかった。生まれたばかりの赤ん坊が発する泣き声のような、自分の存在を周囲に知らしめるための第一声だった。
だが、その声が持つ圧倒的な威圧感に、一行は肩がすくむ思いを感じた。それは、デスピサロの進化が完了し、究極生物となった合図だった。
究極生物の誕生に呼応するかのように、大地が揺れだす。激しい地響きと共に砂埃や小さな石片が宙に浮き出した。ゆっくり、ゆっくりと、デスピサロは起き上がる。
進化が完了した今ならばデスピサロに攻撃は通じる。しかし、ソフィアたちは動けなかった。喉の根元で渦巻く不思議な威圧感が彼女たちの身体を震えさせていた。
デスピサロは完全に起き上がった。新しく生えた頭部には3つの目があった。どこまでも大きく広がりそうな口があった。はぐれメタルの鎧をも貫きそうな鋭い角があった。
腹部に2つ、頭部に5つ、合計7つのデスピサロの瞳が一斉に輝き、デスピサロの周囲を光が覆った。呪文反射呪文マホカンタを唱えたのだ。
デスピサロがマホカンタを唱える姿を見たソフィアたちはようやく戦意を取り戻し、改めて各々の武器を強く握り締めた。
決戦が始まった。
デスピサロはその巨体からは信じられないような速度で拳を振り上げた。狙いは正面にいるソフィアだった。
ソフィアはデスピサロの動きに臆することなく、凍てつく波動を放つため意識を天空の剣に集中させる。デスピサロを包むマホカンタを凍てつく波動で解除しようというのだ。
凍てつく波動の発動に全神経を使うソフィアを守るため、ライアンとアリーナはデスピサロに飛び掛かった。各自が仲間の行動を読んだうえでの見事な連携だった。
だが、ライアンとアリーナの攻撃を腹部に受けたデスピサロは表情をまったく変えなかった。アリーナの鋭い拳に、ライアンのはぐれメタルの剣。数々の魔物を屠ってきた必殺の攻撃も、デスピサロの固い装甲の前には無意味だった。今までと同様、ルカニがバイキルトでフォローしなければ、満足に打撃を行えないほど、デスピサロの身体は堅いのだ。
デスピサロは振り上げた拳で目の前のライアンとアリーナを狙う。アリーナは間一髪避けたものの、ライアンはデスピサロの巨大な掌を全身に受け、地面に叩きつけられた。
地面が砕け、ライアンは埋没する。
「ライアンッ!」
アリーナは声を上げる。その声が終わらないうちに、デスピサロはライアンの埋まった地面を踏みつけた。
爆音が響いた。
凍てつく波動を発動させるために精神を集中させていたソフィアは、アリーナの声に思わず集中を解いてしまった。あと少しで凍てつく波動が発動したであろう天空の剣はみるみる青白い輝きを失っていく。
(ば…ばかッ、あの子はこんな大切なときにッ!)
頭に血を昇らせたマーニャは、状況を省みず、馬車の外に飛び出した。
「貸しなさい! 私が波動を使うから、貴方はライアンを!」
マーニャはソフィアから天空の剣を奪い、意識を集中させはじめた。
ライアンに向けてベホマを唱えようとしていたクリフトは、マーニャが飛び出すとその意図を察し、発動させる呪文をスクルトに切り替えた。
あのライアンを軽々地面に叩きつけるデスピサロの攻撃力は、クリフトの予想を超えていた。スクルト2回では足りなかったのだ。戦闘中に魔力が底をつくのを怖れるあまりスクルトの詠唱回数を抑えたことを、ライアンが地面にめり込む様子を見つめながらクリフトは後悔した。
だが、マーニャが凍てつく波動の発動に回ってくれたお陰で、ライアンの回復をソフィアに任せることが出来る。その隙にクリフトはスクルトを唱えることが出来る。相変わらずのマーニャの勝利への嗅覚にクリフトは頼もしいと思いつつスクルトを唱えた。
ソフィアのベホマ、クリフトのスクルト、マーニャの凍てつく波動。3種類の呪文や特殊効果によって、戦場は強い光に包まれた。
光によって視界が遮られたが、アリーナは躊躇なくデスピサロに飛び掛かる。このような状況ではデスピサロの拳を避けようがないが、クリフトのスクルトが衝撃を軽減してくれるはず。そこまでのことを一瞬で計算してのアリーナの行動だった。ところが。
デスピサロの拳はアリーナの拳よりも一瞬だけ早かった。そこまではアリーナの頭の中では折り込み済みだった。デスピサロの拳がどれほど強力でも、クリフトがもう何回もスクルトを重ね掛けしてくれているのだ。ずいぶん痛いだろうが、致命傷になるような被害にはならないはず。痛みに耐えてデスピサロの懐に潜り込み、渾身の一発を狙うことがアリーナの狙いだった。
デスピサロの爪がアリーナの胸部から腹部に掛けて突き刺さった。その爪は、スクルトの防護効果を無視するかのようにアリーナの身体の奥へ奥へと侵入していく。
…えっ!?
アリーナは信じられないといった表情で、己の体内を異物が貫く感触に戸惑い、蛙が潰れたような無様な音を出して血を吐いた。
「ひ…姫!?」
クリフトの表情はみるみる青くなっていく。ついにデスピサロの爪はアリーナの身体を貫き、天井に向かってアリーナを放り投げた。
天井に叩きつけられたアリーナはそのまま無残に落下、地面に埋まった。いつものように絶妙な着地をすることなく、ぼろくずのようにそのまま地面に埋まるアリーナを見たのは、ソフィアたちはもちろん、長い付き合いのあるクリフトやブライにとっても初めてだった。
アリーナが貫かれ、地面に叩きつけられるまで僅か3秒。しかし、周りにいた仲間たちにはもっともっと長い時間に感じられた。
(ど…どういうことだ!?)
クリフトは混乱する頭を必死に抑えつけながら考えた。
デスピサロの攻撃力はあそこまで強いのか? いや、それならライアン殿も同じような目にあっているはず。姫は確かにライアン殿のような丈夫な鎧を着ていないが、卓越した“受け身”の技術がある。総合的に見て、ライアン殿と姫の守備能力は互角だ。それなのに、この差は一体どういうことなのか…?
クリフトには見当がつかなかった。今が大事な決戦のときでもあるにも関わらずクリフトは思案に没頭してしまう。秀才の悪い癖が出た。
「凍てつく波動じゃ! それしか考えられん!」
クリフトの様子を見たブライが叫んだ。その一言でクリフトの意識は現実に戻る。
そうか、ソフィアがベホマ、クリフトがスクルト、マーニャが凍てつく波動を放ったあの瞬間、デスピサロも凍てつく波動を放っていたのだ!
腕が生え変わってからは使わなくなったとはいえ、足が生え変わった直後のデスピサロは確かに凍てつく波動を使っていた。
凍てつく波動は呪文と同じく、発動に数秒の溜めを要するものだ。だが、溜めを要さない特殊な呪文の発動方法は、先ほどブライがマヒャドで実践してみせた。一介の人間に可能な芸当が、究極生物と呼ばれる完全体デスピサロに出来ないはずが無かった。
デスピサロの放った凍てつく波動が、あのタイミングに意識的に放たれたものなのか、それとも偶然なのかという疑問はまだ残っていたが、それよりもアリーナの安否のほうが、クリフトには大事だった。
我に返ったクリフトは真っ先にアリーナへのベホマを唱えはじめる。
「馬鹿ッ、違うッ」
クリフトの様子を見てマーニャが声を荒げたが、クリフトの耳には届かない。
「ベホマッ!」
クリフトが渾身のベホマを地面に埋まったアリーナに唱える。…クリフトは己の魔力が流出していく感覚に安堵した。もしもアリーナが既に死んでいれば、たとえベホマを使っても魔力が対象に向かって流れていくことはないからだ。間接的なアリーナ生存の証拠に心を緩めるクリフト。
だが、その気のゆるみも、ミネアとソフィアの悲鳴で打ち消される。
「ね…姉さん!!」「マーニャッ!!」
アリーナを貫いたデスピサロは続いてマーニャを狙ったのだった。しかも今度は両手である。左右から爪で貫き、確実にマーニャの息の根を止めようというのだ。
ソフィアは即座にベホマの詠唱を始める。溜めが完了した頃にはデスピサロの攻撃が完了していることを見越してのベホマだった。
ほぼ同時にミネアもベホマの詠唱を始めた。ソフィアもミネアも仲間内の連携を考える暇はなかった。2人ともデスピサロがマーニャに向かって拳を振り上げたとき、反射的にベホマを唱えはじめたのだ。
凍てつく波動を放った反動でよろけたマーニャに、デスピサロの攻撃を避けることは難しかった。卓越した柔軟性を活かして致命傷を避けることも、さきほどのアリーナに対する一撃を見る限り、不可能に感じた。
絶体絶命の危機に陥ったマーニャは激しく動揺したものの、いつもの鋭い判断力を失うことは無かった。父の仇を討つと決意し旅立って以来、数々の死闘をくぐり抜けてきた彼女は、このような状況に慣れっこだった。
「…メラゾーマッ!」
デスピサロの驚異の一撃に対して彼女が咄嗟に選んだ行動は、メラゾーマの詠唱だった。
咄嗟に呪文を唱える方法は先ほどブライが実践してみせた。あのブライのマヒャドは溜めの時間が短すぎて十分な威力を発揮することが出来なかったが、あれと同じ要領で、もう少しだけ溜めの時間を増やせば…。
マーニャは迫り来る左腕をぎりぎりまで引き付けて特大のメラゾーマを放った。アンドレアルの身を焦がした、あの特大の火球がデスピサロの左腕に激突、腕全体に火が回る。
だが、デスピサロは燃え盛る左腕でそのままマーニャの身体を突き刺した。マーニャの口と鼻から血が溢れ出た次の瞬間には、デスピサロの右腕がマーニャに突き刺さる。
果たしてマーニャは。