最近『ファンタジーRPGガイドブック』(安田均とグループSNE/HOBBY JAPAN/1989年)という本を手に入れた。RPGといっても現在広く知られているコンピューターRPGではなく、卓上で遊ぶTRPGの歴史と作品を紹介した本だ。この本を読んでいると、現在のRPGの原形が見えてきて面白い。
※筆者補足
安田均 | グループSNEの代表。 |
グループSNE | 『ロードス島戦記』や『ソードワールド』を送り出した日本TRPG界の最大勢力(現在はTCG『モンスターコレクション』で有名だが)。良くも悪くも彼らの功績は大きい。 |
この本で紹介されているTRPGのうち、和製のコンピューターRPGに大きな影響を与えたと思われるのは、
1974年 | D&D |
1976年 | T&T |
1977年 | AD&D |
1978年 | ルーンクエスト |
といったところだろう。
1974年のD&Dは元祖RPGだ。
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元祖の時点で、現行のRPGの骨格が完全に出来上がっているのが驚きだ。
補足 | FFのメテオや竜王としてのバハムートの元ネタもD&Dだったりする。 |
ちなみに、D&Dの特徴的なシステムのうち、現行の和製CRPGに継承されなかったものは、
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要するにD&Dは『富と名声を夢見る者たち』の冒険ゲームだと思えばいい。冒険を重ねて富と名声を得た冒険者はやがて己の国を興すこともできる。兵を雇って戦争することすら。そして、人間としての頂点を極めたあとは神レベルの世界が待っている。…なんか、すごく楽しそうなんだが。
1976年のT&Tは、
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このうち、種族については説明が必要だろう。種族の概念はD&Dにもあったが、
D&D | 種族と職業の区別がない。エルフは剣と魔法の両方が使える万能種族、ドワーフは小柄だが抵抗力がとことん高い戦士…etcと種族と職業の概念が一体化していた。 |
T&T | 種族と職業を分離。盗賊のエルフ、魔法使いのドワーフなどもシステム上可能になった。 |
また、T&Tでは、和製RPGに継承されなかった面白いシステムがいろいろ用意されている。
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T&Tでは、敵と味方で相手に放った攻撃の総量を比べ、下回ったほうが差額分をダメージとして受けるシステムを採用している。例えば、ゴブリンが3体がそれぞれ、7、10、5の攻撃(計22)を繰り出したとき、こちらの戦士が一人で40の攻撃を繰り出せば、ゴブリンはそれぞれ6ダメージ(40-22=18、18÷3=6)を受けることになる。
ナンセンスなように感じるかもしれないが、T&Tの1ターンは2分に相当する。T&Tにおける『攻撃』とは、その2分間にどれだけ相手チームに攻め込めたかを表現するものだと思えば分かり易いかもしれない。正直な気持ち『総力戦』をこれほど簡単に表現したシステムを筆者は知らない。
ちなみに、ダメージはパーティー内で等分するのが基本だが、弓や魔法などの飛び道具を使えば特定の相手を狙い撃ちすることもできる。だが、弓や魔法を放ったキャラクターは攻撃の総量を算出する判定には参加できない。接戦の場合は、魔法を唱えるために後列に下がったところを攻め込まれて一気に壊滅的な被害を受ける可能性もあるのだ。
MR制とは、モンスターの能力値をたった1つの数字で表わす驚異のパラメーターだ。MRが高いほど相手に強力な攻撃を放てるが、ダメージを受けるとMRが減っていく。つまり、MRが下がったモンスターは、負傷で相手への攻撃能力が低下しているわけだ。ちなみに獲得できる経験値の量もMRで決まる。
このMRを活用すると、モンスターデータの作成がとても楽になる(以下は筆者オリジナルのサンプル)。
ロックジャイアント | MR80 | 身体が岩石で出来ているためダメージを半減できる。 |
セントール・アーチャー | MR20 | 弓を使用。ロックジャイアントを盾に弓を射ちまくる戦法を得意とする。 |
ムーンウルフ | MR30 | 月の光を浴びると興奮してバーサークする狼。集団で出現することが多い。 |
T&Tでは、モンスターをキャラクターと同じ6つの能力値で表わすシステムと、MR表記のどちらかを自由に選択できる。いわゆる雑魚モンスターはMR表記、ボスモンスターはしっかり個々の能力値を設定するのが楽だろう。
1977年のAD&Dは、D&Dの強化版だ。今なお米国のTRPGのスタンダードはこの作品らしい。
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和製RPGでは殆ど見られないが、
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なんて面白いシステムもある。
1978年のルーンクエストは、
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もろにFF2だな。
和製コンピューターRPGの骨格が20年以上前に固まっていたという事実は興味深い。