大きな謎

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FF8のシナリオを語るうえで外せない大きな謎の数々。

  • なぜ幼馴染がパーティーに集まったのか
  • なぜ都合良く宇宙船が姿を現したのか
  • なぜアルティミシアは遠い過去の魔女たちに“接続”できたのか

この数ヶ月で得た最新の研究成果をもとに解きほぐしていこう。

なぜ幼馴染がパーティーに集まったのか

伏線

実は幼馴染イベントにはちゃんと伏線が存在する。

  • アーヴァインはドドンナの命令で行動を共にしていただけだ。
  • にも関わらず収容所を脱出したあともパーティーに残ったのは何故か?

収容所を脱出したあと、スコールたちはバラムガーデンを守るためにパーティーを二手に分ける。片方はミサイル発射を阻止するチーム。もう片方は緊急事態をガーデンに知らせるチーム。

スコール「これは今までの任務とは違う。誰の命令でも依頼でもない…」

誰の命令でも依頼でもないのに危険に身を投じるのはなぜか。スコール、ゼル、キスティス、セルフィは自分たちの母校を守るためだ。では、リノアとアーヴァインは?

リノア「私もどっちのチームでも文句を言わないからね」
スコール(あんたは部外者だろ?)

これはリノアに向けたツッコミだが、アーヴァインに対しても同じことが言える点に注目してほしい。

リノアリノアは他人のトラブルを見捨てられない性格。ティンバー独立の件しかり。だから、まあ分かる。
アーヴァインリノアと比べても意味不明。どうして母校ではなくバラムガーデンのために戦う? 優先順位が逆じゃないか?

当事者であるガルバディアガーデンが魔女に占領されても何もしないのに、部外者であるはずのバラムガーデンの危機には体を張る不自然さ。その疑問が解けたのが幼馴染イベントだったわけだ。
 

補足FF8の伏線が、プレイヤーに展開を予感させるためのものではなく、あとで振り返ってみて成る程と思わせるためのものであることに注意しよう。
ゼル&セルフィの場合

SeeDに就任したとき、シドはスコールに、

シド「ひそひそ…」(あとでじっくり話しましょう)

シドは何を話そうとしていたのか。やはりスコールの使命と失われた記憶のことではないか。
 
ところが、その日の晩(Seed就任パーティー)にリノアの飛び入りの依頼が入る。

  • 儲からない仕事なのでノーグたちはベテランSeeDの派遣を認めないだろう。
  • シドは4人の新米SeeDの中から選ばざるえない。

4人の中から誰を選ぶか。
 
まずスコールは確定だ。のちの話になるが、シドはF.H.との交渉役にスコールを抜擢したとき、

シド「君には出来るだけ外の世界を見てほしいのです。(後略)」
スコール(なんだって?)

こんな発言をしている。森のフクロウという小さな組織のサポートにSeeDの切り札スコールを投入したのも、社会性の乏しいスコールに社会勉強させたかったからではないか。そのためには、本格的な組織の支援より、草の根的な組織の支援に派遣したほうが都合よい(森の梟のアバウトさはシドの想像を超えていたようだが)。
 
では他のメンバーはどうか。

  • トラビアの転校生セルフィが加わっている点に注目してほしい。
  • トラビアガーデンはG.F.の利用を禁じている。
  • そのため、シドはセルフィが記憶障害に陥っているとは思っていない。

もしもスコールとセルフィを長時間共に行動させたら、会話のズレなどをきっかけに、いずれスコールは自分が記憶障害に陥っていることに気づくだろう。要するに、

スコールに記憶障害を思い出してほしいなら→ スコールとセルフィを組ませるべき 
スコールに記憶障害を思い出してほしくないならスコールとセルフィを組ませてはいけない 

シドはセルフィとスコールを組ませることで、スコールに失われた記憶を思い出してもらおうとしたのではないか。SeeD実地試験のときはシドが自分からスコールに伝えるつもりだったので、セルフィを同じ班にする必要はなかったが、飛び込みの依頼で状況が変わったと。
 
ゼルを加えたのはセルフィが思い出を語りやすい環境を整えるためだろう。

もしも3人目のメンバーが… 
ゼルの場合 3人とも孤児院組なので遠慮なくセルフィは孤児院の話題を出せる 
ニーダの場合 孤児院の話で盛り上がるとニーダが仲間はずれになるので、孤児院の話題は出しにくい 

 

補足以上の話はシドがG.F.の副作用を知っている前提で解説している。もしもシドが記憶障害の噂を信じていない(覆面教師に騙されている)のであれば、もっと話は簡単だ。急造チームなので幼なじみ3人のほうが連携し易いと考えたのだろう。
キスティスの場合
  • キスティスがスコールチームに加入したのは、脱走したサイファーを追い掛けてティンバーを訪れたからだ。
  • つまり、キスティスはサイファーの元担任だったからスコールチームに加わることになったと言ってもよいだろう。

では、なぜキスティスは同い年の問題児サイファーの担任に抜擢されたのか。単なる偶然か。或いは理由があるのか。

  • その理由はおそらくスコールの英才教育だ。
  • ライバル(サイファー)と手本(キスティス)を身近に置くことでスコールの成長を促そうとしたのではないか。
  • まともな軍人はG.F.を使わない。卒業生もG.F.を使わない。G.F.を利用した戦闘技術の手本になるのは同じバラムガーデンの生徒だけだ。その中でもキスティスはずば抜けた記録と成績の持ち主だった。
  • ガーデンには年少クラスが幾らでもあるのに、わざわざ同世代の生徒たちのクラスの担任にキスティスが抜擢されたこと、教師の中には若すぎるキスティスにサイファーたち問題児をうまく指導できるか不安視する声もあったこと、この2点にも注目したい。教師たちの反対を押しきり、そういう無茶な人事を行えるのは学園長のシドだけだ。キスティスの人事はシドの独断で決まったことなのだろう。しかし、学園長権限を持ってしても、SeeD実地試験でのサイファー命令違反の件ではキスティスのことをかばいきれなかったのではないか。

シドは、魔法のランプを渡したり、F.H.の交渉役に抜擢したり、ガーデンのリーダーに任命するぐらい、スコールの育成に力を入れている。スコールがSeeDになる以前からシドが裏で色々と手を打っていたという解釈も、そう不自然ではないはずだ。

アーヴァイン編

そもそも、

  • アーヴァインがスコールたちと行動を共にしたのは、彼がガルバディアガーデン最高の狙撃手だからだ。
  • つまり、アーヴァインが最高の狙撃手になったことに物語的な必然性があるかどうかが焦点になる。

アーヴァインが最高の狙撃手になったことに物語上の意味はあるのか。あるとすれば、どんな意味なのか。
 
実は、その謎を解く鍵を握っているのは主人公スコールだ。

スコール(他人に頼ると…いつかつらい思いをするんだ。いつまでも一緒にいられる訳じゃないんだ。自分を信じてくれる仲間がいて、信頼できる大人がいて…。それはとっても居心地のいい世界だけど、それに慣れると大変なんだ。ある日、居心地のいい世界から引き離されて誰もいなくなって…。知ってるのか? それはとっても寂しくて…。それはとってもつらくて…。いつかそういう時が来ちゃうんだ。立ち直るの、大変なんだぞ。だったら…。だったら最初から1人がいい。仲間なんて…いなくていい。ちがうのか?)

アーヴァイン「誰かがいなくなるかもしれない。好きな人が自分の前から消えてしまうかもしれない。そう考えながら暮らすのってつらいんだよね〜。…だから僕は戦うんだ

スコール大切な人を失うのは悲しい最初から一人なら悲しむことはないので一人で生きられる力がほしい強くなりたい
アーヴァインだから大切な人を守れるだけの力がほしい

スコール論でも触れているが、スコールとアーヴァインは“強くなりたい動機”において対になっている存在だ。そして、

  • スコールは強くなりたい一心で努力し、ついにはSeeDになった。
  • では、アーヴァインは…?

アーヴァインは努力の末にガルバディアガーデン最高の狙撃手になった。つまり、

スコール大切な人を失うのは悲しい一人で生きられる力がほしい強くなりたい目標のSeeDになった
アーヴァイン大切な人を守れる力がほしい最高の狙撃手になった

見事な対になっている。アーヴァインが最高の狙撃手になったことは物語上の必然なのだ。『仲間を守る力がほしい』という思いから努力を重ねた結果、かつての仲間と再会できたなんて、なんとも洒落た展開ではないか。この件ではFF8はリアリティよりも、フィクションとしての気持ちよさを重視したわけだ。

そして重要なことは…

要するに幼馴染の結集とは偶然の積み重ねによって生じた奇跡だ。だが、話の焦点が、

×幼馴染が集まるという奇跡が起きて素晴らしいね
この一生の一度あるかないかの奇跡を手放したくない

ということに注目してほしい。
 
そもそも、幼馴染という事実を暴露したアーヴァインにとって、幼馴染との再会という奇跡は必ずしも喜ばしいものではなかった。

  • アーヴァインは任務でスコールたちと一緒にいただけだ。
  • アーヴァインにはバラムガーデンのために命を賭ける義務はない。
  • でもアーヴァインは収容所以降もパーティーに残った。
  • おそらくアーヴァインは幼なじみのために戦いの場に身を投じたのだろう。

これだけなら単なる美談に聞こえるかもしれない。だが、

  • アーヴァインはイデアの正体も記憶障害のことも知っている。
  • 戦いを続けるということは自分の記憶を犠牲にするということだ。
  • 勝利とはすなわち、お世話になったママ先生を倒すことだ。

記憶障害に陥っていないからこそ、スコールたちにはない悩みを背負わねばならなかった。

  • 記憶障害は嫌だ。でもイデアはG.F.の力抜きで勝てる相手ではない。
  • 負ければ命がない。
  • 勝っても大事な人を失い、記憶を失う恐怖に脅えなければならない。
  • 要するに勝っても悲惨。負けても悲惨

アーヴァインは、『偶然の再会』を果たしてしまったせいで、どうしようもない逆境に追い込まれてしまったのだ。
 
勝っても悲惨。負けても悲惨。だが、このどうしようもない状況を抜け出す方法が1つだけある。それは逃げることだ。Disc2終盤のシドのように。

  • 「本番に弱い僕が戦いに参加してもみんなの足手まといになる」
  • 「SeeDじゃない僕が戦いに参加してもみんなの足手まといになる」

戦いに参加しないための、尤もらしい言い訳は幾つでも用意できた。
 
…だが、本当に逃げてしまっていいのだろうか。

  • 『ばらばらだった幼なじみが偶然4人も集まる』状況が発生する確率はどれぐらいだろう?
  • しかも、その4人の中に、片思いの相手がいる確率は?
  • さらに、その4人の中に、ヘタレな自分を勇気づけてくれる素晴らしいリーダーがいる確率は?
  • そんな都合の良いことが一生に何度も起こるはずがない。
  • よくよく考えれば今が人生の分岐点なのではないか?

アーヴァインはスコールたちの知らないところで大きな決断を迫られていたのだ。

  • Disc1〜2のアーヴァインの行動がちぐはぐなのは、アーヴァインの気持ちが大きく揺れていたからだろう。
  • トラビアガーデンまで真実を語れなかったのは、それまでずっと悩んでいたからだろうか。

たっぷり悩んだ末の決断だったからか、トラビアガーデンで真実を語ったあとのアーヴァインの言葉には迷いがない。

アーヴァイン「僕たちの相手は、大好きだったママ先生だ。G.F.のせいで記憶を失うかもしれない。いいんだ、それでも。僕は運命とかに流されて、ここにいる訳じゃないから」

アーヴァイン「いつだって選べる道は少なかった。時には道は1本しかなかった。その、少なかった可能性の中から自分で選んだ結果が、僕はここまで連れてきた。だからこそ僕はその選んだ道を…、選ばなくちゃならなかった道を大事にしたい」

実際アーヴァインには『ママ先生と自分の記憶を犠牲にする覚悟で戦うか』と『スコールたちに合わせる顔がなくなる覚悟で逃げるか』の2つしか選択肢がなかった。
 
スコールたちの気づいていないアーヴァインの葛藤を踏まえて、あの幼馴染イベントを見返してみると、面白いことに気づく。

  • アーヴァインの話の前半は、みんな幼馴染だったんだという衝撃の告白だが、後半は自分の戦う動機の説明になっている。
  • そもそもアーヴァインが過去の思い出を話したのは、リノアが戦うことへの疑問を口にしたのがきっかけだから、確かに前半よりも後半のほうがメインでもおかしくない。

幼馴染だったという衝撃の事実にばかり目がいくけど、むしろ肝心なことは、その事実を踏まえたうえで、アーヴァインがどんな決断を下したかという部分なんだよね。

プレイヤーが気づかないのは当たり前

幼馴染イベントの重要部分にプレイヤーが気づかないのは、プレイヤーが悪い訳でも、作り手が悪い訳でもない。だって、肝心のスコールがアーヴァインの語りの意味を半分も理解していないのだから。

スコール「キスティス、ゼル、セルフィ! ブリッジに集合してくれ!」

アーヴァイン「おいおいおい! なんで僕は呼ばれないんだ〜?」

アーヴァイン「僕だって仲間だろ〜?」
スコール「ああ、悪かった」
アーヴァイン「頼むよ、もう〜」

アーヴァインの敗因は『可能性』とか『選択』とか『選んだ道』とか抽象的な言葉を多用してしまったことだろう。そういう言葉はなんとなく耳心地はいいけど心には残りにくい。
 
少し話が脱線するが、Disc2では、

キスティス「今なら分かるんじゃない? 誰かに話したい。話を聞いてほしいって気持ち。(中略) 私に話してみない? 少しは楽になるかもよ?」
アーヴァイン「もう黙って離ればなれにされるのは嫌だから…。だから僕は戦う。少しでも長く一緒にいるために」
リノア「なんでもいいの! そう、なんでもいいの。なんでもいいから、もっと私たちに話してってこと。私たちで役に立てることがあったら頼ってね、相談してねってこと」

キスティスやアーヴァインもスコールに対してはかなり好意的だ。にも関わらず、Disc3以降、彼の頭の中がリノア一色になるのは、リノアぐらいストレートに言わないと、スコールには通じないということかもしれない。

補足・幼馴染イベントを解く鍵とは

要するに、

  • 幼馴染という真実を隠していたのも暴露したのもアーヴァイン。
  • だからアーヴァインの心境を探っていくことが理解の近道。

こういうことだったわけだ。分かってしまえば単純な仕掛けだが、分かるまでが難しい。
 
FF8のシナリオ上の謎は、簡単なものから難しいものまで、一通り揃っているところが興味深い。プレイヤーがステップアップしていけるような配慮なのだろうか。スコールの両親などは比較的簡単な謎、この幼馴染イベントはスコール視点のままだと分かりづらいという意味で比較的難しい謎に入るだろう。

なぜ都合良く宇宙船が姿を現したのか

宇宙は広い。ラグナロクが都合よくスコールたちの目の前に姿を現す可能性は限りなく低い。だが、これを単なる御都合主義だと決めつけるのは早い。

  • リノアが自分が魔女だと告白したとき、スコールが『…やっぱり…そうなのか?』と思った点に注目してみよう。
  • アルティミシアが魔女にしか“接続”できないという描写はFF8にはない。特にあの時点では『アルティミシアが中に入る→リノアは魔女』という推測は成り立たない。
  • ヴァリーは有力な証拠に成りうるが、特殊技を使わないで戦っているプレイヤーだと気づかない可能性も高い。

どうしてスコールはリノアが魔女だと勘付いたのだろう?

  • プレイヤーが『都合よく現われたラグナロク』に違和感を感じたように、スコールも違和感を感じたのではないか。
  • その場にいるのはスコールとリノアの2人だけ。スコール自身に心当たりがない以上、可能性があるとすればリノアだ。
  • でもリノアは普通の人間。そんな特別な力はない……いつの間にかイデアから魔女の力が継承されたのであれば話は別だが。

『都合よく現われたラグナロク』とは、リノアが魔女だったという伏線なのではないか。リノアはまだ自分の力を制御できていないわけだし。
 

補足この『宇宙船が来たのはリノアの無意識な力のせい』説は、もともと想像コーナーに置いていたもの(今も置いてあるけど)。今回はスコールの発言が気になって色々と探していたら、結果的に前書いた想像の内容に被ってしまった。

なぜアルティミシアは遠い過去の魔女たちに“接続”できたのか

イデアは、アルティミシアとは遠い未来の魔女だと語る。ということは、アルティミシアにとっては、イデアやリノアは遠い過去の魔女になるわけだ。

  • エルオーネの超能力では『面識のある人』の過去にしか送り込めないはず。
  • エルオーネの超能力を元にしたジャンクション・マシーン・エルオーネにも同様の制約があるはずだ。

にも関わらず、なぜアルティミシアは面識のあるはずがない遠い過去の魔女たちに“接続”できたのだろう?

  • ジャンクション・マシーン・エルオーネが改良されて、面識のない人にも接続できるようになったという仮説は成り立たない。
  • 何故なら、その仮説に基づくとアルティミシアはスコールにすら“接続”できてしまうからだ。『スコールに接続して精神を操り自害』でFF8の物語は呆気なく終了してしまう。

アルティミシアが“接続”した相手のはイデア、アデル、リノア。みんな魔女。ということは、その3人に共通する『魔女』や『魔女の力』が謎を解く鍵になるはずだ。

  • バラムの老人が語る昔話と劇中での魔女の力の描写から、魔女の力と呼ばれているものの正体は、肉体を捨てた創造主ハインだと推測できる。
  • つまり魔女とは、肉体を失ったハインをジャンクションしている女性のことではないか。ラグナが“妖精さん”を自分の意志で外せなかったように、魔女も自分の意志ではハインを外すことができないわけだ。
  • Disc4でエルオーネは、アルティミシアごとリノアをアデルに接続した。つまり“二重接続”は可能だ。

アルティミシアが“接続”したのは、魔女たち自身ではなく、魔女の力(=肉体を捨てたハイン)ではないか。Disc2の最後でアルティミシアはイデアからリノアに宿主を移すが、これは彼女の意志ではなく、力の継承のせいだろう。


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